HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

1986年にバンド Boredoms を結成、そのフロントマンとしての活動を核に、1996年よりDJ活動をスタート。EYヨ名義として2001年から。また様々な変名プロジェクトやリミックスワーク等も手掛け、さらに音楽活動の他にもアートワーク制作や自らの個展等、その実験的なアプローチで異彩を放ってきたアーティスト、ヤマタカEYヨ。日本のみならず世界を舞台に活躍する前衛音楽家・芸術家であり、クラブやレイヴ、フェスまで、ダンスミュージック・シーンを代表するトップDJでもある。昨年の taicoclub への出場や 88BOADRUM、"Super Roots" シリーズのリリース等、常に新たな可能性に挑戦し続け周囲を驚かせている。2月6日にclub asiaで開催された trico にて、プレイ後のEYヨ氏にインタビューを試みた。ステージ上での常人離れした印象とは裏腹に、とても落ち着いた物腰で、一つ一つの言葉を慎重に選びながらEYヨ氏独特の世界観を語ってくれた。

Interview & Introduction : Midori Hayakawa (HigherFrequency)
Thanks : Eagle North Sound

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HigherFrequency (HRFQ) : 音楽的なバック・グラウンドを教えて下さい。どのように音楽と出会ったのですか?

EYヨ : 最初の音楽への入りは Down Town Boogie Woogie Band とジグソーのスカイハイです。小学生の時に流行ってて、それでラジオをチェックしたりだとかレコードを買ったりだとかしてましたね。Beatles とかは全く通過していないんですよね。

HRFQ : 今までに一番影響を受けたアーティスト、聞いてもいいですか?

EYヨ : 一人に絞るのは難しいですけど…バンドでいうと、昔 Rough Trade Records からレコード出してたイギリスの Swell Maps ってバンドがいたんですけど、その2ndアルバムにめちゃくちゃ影響されて…そのバンドはずーっとリリースしないで’70年代のはじめから練習だけしてたみたいで、最初は楽器でなく空き缶なんかで演奏していて、7年間位ガレージでリハーサルしてだんだん演奏できるようになってきたバンドだったようです。フリーキーなガレージパンク実験みたいなことをやっていて、タイプライターとカズーだけでやってたりとか。

HRFQ : ライブと、DJはどういった感覚の使い分けでやっているのですか?

EYヨ : DJやりだしてからバンドにその影響が浸透した感じで、元々曲を自分で考えるよりもクラブとかに遊びに行って、家帰った時に頭ん中に残ってる何か…フレーズだったりリズムだったりするんですけど、それをうろ覚えのままバンドでやったりもして。バンドでやった事をDJでしたりとか、相互なかんじですね。

HRFQ : 昔はよくクラブに遊びに行っていたのですか?

EYヨ : うん、すごい行ってた。

HRFQ : どういう感じの音を?

EYヨ : テクノが出てきた頃に、まぁあんまりよく訳がわからずに行ってました。その頃テクノってものが定義としてよくわからなくて…。多分バレアリックなものだったと思います。

HRFQ : ライブ、DJそれぞれの魅力について話してもらえますか?

EYヨ : 未だにDJって未知ですね。…DJやるときって、まずどういう雰囲気なんだろうってイメージしたりしますが、わからんときは、そのままの感じが出てしまう事が、やっぱりあります…。DJ は踊らしたもん勝ちっていうところあると思うから、ライブとDJはそういう部分で全く違いますね。

HRFQ : これまでに日本を含め、いろんな国ですごい数の公演をされていますが、特に印象深かったのは?

EYヨ : う〜ん…ライブハウスが火事になったやつとかね。(笑)そういえば2年前にもその同じライブハウスでライブやったんですよね。アイルランドだったかな。それは対バンしたバンドが火を使ってて、周りが燃え出して火事になってるんやけどライブをやってて。しかもそいつら、近くに湖あるからに泳ぎにいこうやって言ってましたね 。冬ですよ(笑)。でもそのバンド、畳一帖分ぐらいの琴みたいな弦楽器を使ってて、そのストロークに感動したんですよ。それを覚えてて、エレキギター的にできへんのかなって思って。

HRFQ : あのタイコクラブでも使っていた楽器ですか?

EYヨ : そう。タイコクラブではセブンナー(ギターが7本くっついている楽器)1号と2号使ったんで合計14本使って、パーカッションとして取り扱うかんじです。

HRFQ : ライブを始めて見たとき、これは生で見て聴いて、感じてこその音楽だと思ったのですが、EYヨ さんが思うそこの感覚について話していただけますか?

EYヨ : 音が突然にボアって出ちゃうような、出た音ってよりも、その出る前ぐらいの感じを、まぁ衝動っていうのかな、それを音楽やることによって確かめたいというか。楽器とか何もできないし、そこで人に披露できるようなものが核としてあるわけではないです。ただその場と自分との共振があって、衝動的なものが出たり、なかったり、という感じです。あ、でも練習はすごくするんですよ。あの…毎週やってます。けっこう細かいって言われます(笑)。

HRFQ : 「衝動」ですか…

EYヨ : いや、ようは僕頭悪いと思うんで(笑)。システム的なことに関する時、どの程度のバランスでそのことに対して望めばいいのかわからないまま、初発の触感に全て預けてしまうところがあって。

HRFQ : 例えばCDなどを制作する場合スタジオで録音すると思うのですが、それも外で行うライブとは違いますよね?

EYヨ : 違うからそれぞれ、アレンジしなおしたほうが、やっぱりいいかもしれませんね。

HRFQ : 音楽を作るときのアイディアはどこからくるのですか?

EYヨ : 自分がそのアイディアを出してくるわけじゃ全くないと思います。そこに気持ちを合わせるっていうか…音楽が何かしら現象として成り立って、それを聴いたりだとかっていう事を考えたときに、なんか元があるような気がして。元っていうのはその…上手く言えないんですけど、音楽が音楽になってるその元々のところ。自分がアイディアの原点ではないし、自分が音を出してるってことでもないと思うんですよ。で、これが自分の表現であるとか、自分の音だよっていうのも何か大きな語弊というか、空白感があるし。それは本当に違和感がありますね。もちろん自分のやり方で生成して来てるっていうのはそうなんでしょうけど、気持ちを合わせて引き出してるだけだと思うんですよ。その、元らしき所から。スーパーマーケットや、読めない文字や無関係なものを組み合わせたり、とかいった事が音楽的に媒介したり。あと音楽的経験値から音が派生してきたりする事は少ない様な気がします。 そういう意味合いでは何も経験になっていないというか。

HRFQ : なるほど、そうなんですね…インスピレーションを感じるといいますが…?

EYヨ : 偶発的インスピレーションっていうのは元にアクセスして、うまい具合に乗り遅れずに便乗できたってことだと思うんですよ。つまりタダ乗りできたというか、それがテクニックだったりするし、コマンドだったりするし、メールアドレスだったりもするんだと思うんですよ。

そこでテクニカルな丹念を積んでる人は、より精密なとこにアクセスできるのかもしれないし、でもそれがあることによってタダ乗りが、区間リミットされてしまう部分もあると思うんですよ。この音楽は、こういうもんだっていう言い方は区間限定の際はいいかもしれないですね。ラモーンズの事を現代音楽、ミニマルミュージックだ、とかね。わかることによってまた巨大な謎が出てくるっていうのと同じく、わからないって部分で常に KEEP GOING していって。

こういう表現をしようと思ってできることが、ほとんどなくて…後からですよね、何なんだっていうのを後から、遺跡発掘みたいに。自分の過去のデータがポーンって勃発的に出ちゃったりすることもありますね。まさか俺はこんな自分じゃないっていうような、ある程度規定してたとしても、そこからすごく逸脱するようなものが出る場合もあるし。そういう現象が、あの…すごい面白いですね。何か感動するときってのは余韻があるものなんですよね。発掘したりして響きが戻ってくる、続いていく感じの。

HRFQ : ずばり、EYヨ さんにとって音楽とはどういうものですか?

EYヨ : 未知です(笑)。環境とか… もっと大気とか物体同士の干渉だとか、いつも皆さん空気を手で触ってると思いますが、これって手を動かすだけで音が変わるんで…振動と振動の重なりで音楽ができてくるし、言葉だったりとかも元はそういうもんやったんかな。それを五線譜にしたりとか、ハーモニーをすごくわかりやすく形に.... そういうことなんですかね。

HRFQ : なるほど・・・本日は貴重なお時間を頂き、どうもありがとうございました!

End of the interview




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