HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Ernesto


Andreas Saag のユニット Satateless とコラボレーションした "Fallin' Into" や Season feat. Ernesto としてリリースした "Juice" など、ジャズ〜クロスオーバー・シーンで話題を呼んだトラックを集め、昨年の5月にリリースされた作品集 "Ernesto Sings" がスマッシュ・ヒットとなり、日本でもその人気をジワジワと高めてきているスウェーデン人ヴォーカリスト、Ernesto こと Jonathan Backelie。

ソウルフルでインテリジェントなヴォーカル・スタイルから、「北欧のジャミロクアイ」とまで評されている彼、今回のニュー・アルバム "Find The Form" でも、Kyoto Jazz Massive の沖野修也、Swell Session こと Andreas Saag、Bugz In The Attic の Seiji など、各国からクロスオーバー・シーンを代表するアーティストをプロデューサーに迎え、その才能を披露している。

そんな彼がニュー・アルバムのプロモーションのために来日、流暢なイギリス英語で HigherFrequency のインタビューに応えてくれた。

*このインタビューをビデオでご覧になりたい方は・・・ここをクリック!

> Interview : Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)

triangle

Higher Frequency (HRFQ) : 今日はありがとうございます。先日沖野修也さんから伺ったのですが、何回か日本にいらしたことがあるそうですね。来日は今回で何回目なのでしょうか?

Ernesto : これで4回目だよ。初めて日本に来たのが2004年の11月で、その次に来たのが昨年の5月と11月、それで今回なんだけど、短期間の間に一気に来日してるんだよね。

HRFQ : それほど頻繁に来日されているのは何故ですか?

Ernesto : 日本に来る度に、また戻ってくるための口実を作ってしまうんだよね。初めて来日したときの衝撃がものすごかったんだ。ただ、沖野修也に会ったことも大きな理由だと思う。まず始めに彼とは、昨年の5月にリリースされた、他のプロデューサーとのコラボレーション作品を集めたコンピレーションのアイデアを出し合ってね。そのリリース・ツアーで日本に帰ってきた時に今回のアルバムのアイデアやデモを彼にプレゼンして、「この作品に興味を持ってくれるレーベルはないかな?」って相談したのさ。

HRFQ : 沖野修也さんとの関係はどのようにして始まったのでしょうか?

Ernesto : 僕が以前ヨーテボリに住んでいた時に彼が訪ねて来たんだ。ヨーテボリの音楽シーンのことを知っていたんだろうね。僕たちみんなをヨーテボリにある素晴しい日本食のレストランに連れて行ってくれたんだ。マメに連絡をとるようになったのはそれからかな。僕らが向こうでやっているパーティーに遊びに来て、逆に僕を日本に招いてくれたというわけさ。

HRFQ : ヨーテボリについてお伺いしたいと思います。以前、ストックホルムのレーベル Dealers of Nordic Music の二人とインタビューしたのですが、DNM からリリースしている Hird と、あなた、そして Swell Session の Andreas は同じ高校に通っていたそうですね。当時、二人のことはどのくらい知っていたのですか?

Ernesto : すごくよく知ってるよ。Christoffer (Hird) と Andreas、僕、それに Paul っていう他の友達は、学校が始まってすぐに仲良くなってね。それからずっと親友なんだ。今でもすごく近しい友達だよ。

HRFQ : 音楽的な面ではどのくらい影響を受けましたか?

Ernesto : もの凄く重要だから、どのくらい影響を受けたかを言うのは難しいな。彼らとは8〜9年前からずっと一緒に音楽をやってるんだ。特に Andreas は、個人的にも近しい友達だしね。だから僕らが一緒に音楽を作るとなると、お互いのことをよく知ってるから、スタジオでもお互いの意見を尊重できて、自分ひとりでは知ることの出来なかった音の側面が引き出せるんだと思うよ。

Ernesto Interview

HRFQ : あなたの音楽的バックグラウンドを教えていただけますか?

Ernesto : クロスオーバー・シーンで活躍するアーティストの多くが、始めはジャスやソウルといったジャンルを聴いていて、一定のところでエレクトロニック・ミュージックに出逢って、それらの音を融合していくものだと思う。でも僕の場合、11〜12歳の時にブレイクビーツや当時流行っていたレイヴ系の音を聴くようになって、ジャズを聴くようになったのは16才の時に先生に教えてもらってからなんだ。自分の作る楽曲やパフォーマンス、歌い方にそういった要素が加わっていったのはそれからなんだ。だから僕の場合、反対なのさ。要するに、Prodigy から Chet Baker へと移行していったんだ。

HRFQ : では、他のアーティストは少し違った入り方だということですね。

Ernesto : そうだね。ほとんどの人が逆だと思うよ。

HRFQ : 11〜12歳の頃からクラブ・ミュージックに興味があったということですが、初めてダンス・ミュージックのイベントに行かれたのはいつでしたか?

Ernesto : スウェーデンのクラブ・シーンは年齢制限が厳しくてね。森の中で違法レイヴがたくさん行われてた時代もあったんだけど、そういったイベントにはほとんど行けなかったんだ。だから初めてクラブ系のイベントに行ったのは、ちょうど高校が始まったぐらいの年だったね。まぁ、それも違法パーティーだったんだけど。僕は当時15〜17歳くらいだったけど、こういった違法パーティーは本当に危険で、僕たちみたいな若造がいちゃいけないような場所だったんだ。でも、ただお酒を売っている普通のクラブには年齢が足りなくて入れなかったから、そういった若い子たちが集まってヘビーなドラッグをやっているような危険なレイヴに行っていたというわけさ。

HRFQ : それは安全な場所とは言えないですね。

Ernesto : だよね。ある日学校に向かう途中で新聞紙を読んでたんだ。そうしたら新聞の一面に、その前の日にちょうど行けなかった違法パーティーに、警察が襲撃したっていう記事が載っていてね。「聞いたことある名前だな…。もしや、これっていつも僕が行ってるクラブ?」って感じだったよ。だから、「自分が危険な場所に行っていたんだ」って気付いたのはその時が初めてだったんだ。新聞で読んだような人たちがパーティーにいるなんて全然気付かなかったしね。だから怖かったよ。

HRFQ : あなたの父親が聖職者だったことから、教会で歌われていた時期があったそうですね。そういった経験はあなたの音楽性にどのように影響したと思いますか?

Ernesto : 僕の信仰は厚いし、同時にとても大切なものでもあるんだ。教会のステージは、子供としてあまり悪い影響を受けない場所だし、人々もすごく協力的だから、そういった場所で成長できて良かったと思ってるよ。以前、Michael Jackson のドキュメンタリーを見ていて、その中で Jackson 兄弟が、彼らが昔ステージでパフォーマンスをした後に、ストリッパーが出てきたっていう話をしていたと思うんだけど、そういう場所は子供にとって理想的な場所だとは思えないんだ。だから教会という環境で育って、人々からのサポートを受けてきたことは、ものすごく重要だったと思うよ。

それに、そういった経験は音楽に対する考え方や見方にも大きなインパクトを与えてくれたしね。僕に、音楽に必要なのは音よりもメッセージだということを気付かせてくれたんだ。だから僕にとってライティングとは、その歌詞がスピリチュアルであろうが恋愛であろうが、いい時間についてであろうが、それらの言葉はすべて音楽を媒介にして、人々に届けたいと思っているメッセージなんだ。

HRFQ : 先程、Michael Jackson について触れられていましたが、今回のアルバムを作るにあたって、彼を意識した部分はありましたか?

Ernesto : アルバムを作り始めたとき、Michael Jackson の "Off The Wall" のようなアルバムを作りたいと思ったんだ。あの作品はメイン・ストリームでも通用するけど、同時にダンス・ミュージック・リスナーにも人気があるよね。今クラブでプレイしても、十分にフロアを盛り上げられる作品だと思う。僕はこのアルバムをハウスのアルバムにはしたくなかった。そうすることで、メイン・ストリーム系の音楽を聴くような人たちを仲間はずれにするようなことはしたくなかったのさ。クラブ・リスナーにもラジオ・リスナーにもリーチしたかった。そういう意味で "Off The Wall" はいい例だと思ったんだ。

Ernesto Interview

HRFQ : 今回のアルバムでは、様々な国のプロデューサーと一緒にコラボレーションされていますね。スウェーデン人や日本人プロデューサーに関しては、今までにも一緒に楽曲制作をしたことのあるアーティストが多いと思うのですが、Bugz in the Attic の Seiji や Atjazz といったイギリス人プロデューサーについてはいかがですか?どのようなきっかけで一緒に仕事をするようになったのでしょうか?

Ernesto : 今はヨーテボリに住んでいるから、ヨーテボリのアーティストとのコラボレーションが多くなるよね。Seiji や Atjazz とは、バーミンガムに住んでいた時に音楽出版社やその他のコネクションを通じて知り合ったんだ。Atjazz の場合、出版社から「今アルバムをつくっている最中で、ヴォーカリストを探しているらしいんだ。やってみたいかい?」って言われたんだ。もともと彼の音楽は好きだったから、すぐに引き受けたよ。彼はダービーというバーミンガムから電車で30分ほどの町に住んでいるから、彼のスタジオに出向いていって、彼が作っていた音を聴いて、アルバムからシングル・カットされたトラックを録音したんだ。そんなことがあって、実際にこのアルバムを作り始めた時、是非彼にもプロジェクトに参加してもらいたいと思ったのさ。それに、Seiji もね。実際にリリースされるのは今回のトラックが初めてだけど、彼とは今までにも一緒に仕事をしたことがあるんだ。Swell Session (Andreas) といったアーティストに関しても、以前からずっとコラボレーションしてきたんけどね。

HRFQ : それぞれのプロデューサーの作る音楽に、国ごとに違ったセンスを感じることはありますか?

Ernesto : そうだね。地域によって少しの違いはあるかもしれない。でも、最近はそういったもの対して僕自身が少し鈍感になってしまったのかもしれないと思うんだ。ヨーテボリのアーティストに、イギリスのプロデューサーと作った音を聴かせた時に、「少し音が荒いね」って言われたことがあってね。そう言われるまで僕はそんなこと気付きもしなかったんだ。だから、その国の雰囲気やサウンドに次第に慣れていくものなんだろうね。

ただ、すごく近しいスタイルの音楽をやっているとしても、日本人アーティストのサウンドは、ヨーロッパのアーティストのものとはやっぱり少し違うしね。「どんなところが違う」って言うのは難しいんだけど、確かに地域によって多少の違いはあると思うよ。

HRFQ : 最近では、メジャーなハウス・シーンでも多くのスウェーデン人アーティストが活躍していますが、先日、Steve Angello がインタビューの中で、スウェーデンが多くのプロデューサーを輩出している理由について、「スウェーデンでは、やることもあまりないし、心配することがあまりないから、音楽作りに集中できる」と話していたんですが、そういった意見についてどう思われますか?

Ernesto : そうだね。結構正しいかもしれないね。ヨーテボリで出かけられる場所なんてものすごく限られてるし、冬の間なんかは寒いからどこにも出かけたくなくなるしね。だから、家にいて、あったかくして、スタジオで仕事するほうが良いのさ。だから彼の意見は正しいと思うよ。

HRFQ : 現在のスウェーデンのシーンは特に盛り上がっていると言えますか?

Ernesto : 確かに、最近のスウェーデンの音楽には何かスペシャルなものがあると思うんだ。ただ、それが通常と違ったものなのかどうかは分からないな。スウェーデンからは、ここ十数年の間にも、クラブ・シーンでもメジャー・シーンでも、定期的に素晴しい作品がリリースされ続けてるように感じるんだ。

HRFQ : 了解です。今日はありがとうございました。

Ernesto : ありがとう。

End of the interview

関連記事


関連リンク