HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

DJ Vibe


スペインやポルトガルで盛り上がりを見せるトライバル・ハウスとプログレッシブ・ハウスとの融合をいち早く表現し、妥協を許さないサウンド・セレクションと渋いアーティスト・チョイスで、東京のクラブ・シーンの中でも特に硬派な存在として異彩を放ってきた WOMB のレジデント・パーティー Session。そのレジデントDJ として活躍する Tommy Wada 氏をインタビュアーに迎え、ウエブ業界の"硬派"を自認する(?) HigherFrequency と"Session"がコラボレートしていく"硬派"なインタビュー・シリーズ、それが"Talk SESSION Series"である。

その5回目に登場するのは、2004年の3周年に続いて、2年連続で Session のアニバーサリー・パーティーにゲストとして出演したポルトガルのトップ・スター DJ Vibe。地元のシーンから「ポルトガルの神様」との称号を与えられ、イベリア半島からプログレ/トライバル・シーンを揺さぶり続ける DJ Vibe だが、そのキャリアは決して短いものではなく、90年代の半ばには、こちらも同じく破竹の勢いで活動を続ける Rui Da Silva と共に Underground Sound Of Lisbon を結成し、あの「有名な」叫び声がフィーチャーされた"So Get Up"を始め、数々のフロア・アンセムを世に送り出したことでも知られている。

そんな DJ Vibe に HigherFrequency がインタビューを実施。自身のキャリアや、ポルトガルのシーンについて、Tommy Wada 氏をインタビュアーに迎えて話を訊いた。、

> Interview : Tommy Wada (Session) _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency)

triangle

Tommy Wada (以下TW) : お久しぶりです!昨年は Session の3周年記念パーティーでプレイされて、クラウドの反応も素晴しかったと思うのですが、いかがでしたか?エンジョイされましたか?

DJ Vibe : あのギグは素晴しかったね。楽しかったよ。クラブそのものやクラウド、サウンド・システムやライティング…すべてが印象深かったな。

TW : 日本のクラウドの印象は良かったということですよね。

DJ Vibe : そうだね。あんなにたくさんの人が来てくれるとは思ってなかったんだ。日本でプレイするのは初めてだったし、どんなシーンなのかも、どんなギグになるかも分からなかったからね。でも、ものすごくいいリアクションを受けて、かなり感動したよ。素晴しい夜だった。

TW : 今回の4周年記念パーティーでは、どんなギグが期待できるのでしょうか?

DJ Vibe : 新しいトラックを数曲と、ダーティーなビート、トライバル系の音にパーカッション。要するに、いい音さ!

TW : 最近のポルトガルのクラブ・シーンについてお話していただけますか?

DJ Vibe : いい感じだよ。数年前くらいに盛り上がりのピークがあってね。たくさんのパーティーや大きいイベントがあって、夏の間にはバンドも出演する大きいフェスティヴァルが毎週のように開催されてたんだ。今でも夏になればこういうフェスティヴァルは開催されるけど、クラブ・シーンは当時と比べたら少し落ち着いてしまったね。いろんなDJがプレイしに来て、クラウドも、見たいDJを見つくしてしまったのさ。最近のクラウドがお金を払ってでも見に行くようなDJは、少ししか残っていないんじゃないかな。

ポルトガルのクラウドはすごくこだわりがあると思うんだ。DJそのものや、そのDJがどんなプレイをするかを知っていないと嫌なんだろうね。彼らがあまり知らないDJがプレイするときは、あまりクラウドも集まらないから、プロモーターたちも以前と比べてあまりポルトガルにDJを呼ばなくなったんだ。それでも、いくつかのクラブは相変わらずいろいろなDJのブッキングを続けてるけどね。以前と比べたら少なくなったよ。

TW : インターネットで、レジデントを務められているクラブを見ました。 Lux というクラブですよね?

DJ Vibe : そう。Lux だよ。Lux はポルトガルで、毎週のように良いアーティストがプレイして、2週間に1回はビッグ・ネームや新鋭アーティストがプレイしたり、新しいサウンドのパーティーを開催している唯一のクラブなんだ。彼らがシーンに生き残ったのも、彼らのブランドやスタッフに強い影響力があるからさ。要するに、クオリティーが高いのさ。

DJ Vibe Interview

TW : しっかりしたクラブということですね?

DJ Vibe : そうだね。クラウドの信頼もあるんだ。だから今でもうまく行ってるのさ。先週は彼らの7周年記念パーティーで、すごく盛り上がったよ。いいパーティーだった。

TW : クラブには複数のフロアがあるのですか?

DJ Vibe : あるよ。バーがあって、テラスがあって…オープン・エアーで、夏の間じゅうオープンしてるんだ。それからメイン・フロアがある。いいクラブだよ。バーなんて特にスペシャルな感じなんだ。建築家と装飾家の人がオーナーを務めているから、そういう面は特に素晴しいよ。

TW : どのくらい頻繁にプレイされているのですか?

DJ Vibe : オープン当初は毎週金曜日にプレイしていて、それを2〜3年続けていたんだけど、そのあと3〜4ヶ月くらいクラブを離れて、1ヶ月に1回プレイするようにしたんだ。その方がもっと特別な感じになるからね。最初はオーナーも「う〜ん…上手くいくかなぁ?」って感じだったんだけど、僕にはベストな方法だと思ったんだ。一ヶ月に一度にすれば、パーティーがもっと特別になるし、クラウドもパーティーを楽しみにして遊びに来てくれるんだ。おかげで僕のパーティーは今でもクラブで最も繁盛しているパーティーの一つなんだ。

TW : シーンで一番流行っている音楽スタイルは何ですか?

DJ Vibe : エレクトロ系の音が流行ってるね。テクノやミニマル・テクノ、テック・ハウスなんかがたくさんプレイされてるよ。エレクトロ・ポップも多いし、それにトライバル系やプログレッシヴ系の音も人気がある。以前より人気はなくなったけど、コマーシャルなクラブもまだたくさんあるんだ。だけど、やっぱりメインなのはエレクトロ系の音だね。そういった音をプレイしてるDJはそんなに多くないし、そんなにエレクトロに熱中してる人も多くはないと思うんだけど、きっと今はそういう音がオシャレなんだろうね。僕のプレイするような音を聴きに来て、楽しそうに踊ってくれるクラウドは、まったく違ったタイプだけどね。だから僕もすごく嬉しいんだ。

TW : ポルトガルのシーンで、あなたが注目している新鋭アーティストがいたら教えてください。

DJ Vibe : 何人かの若いアーティストが曲作りをしてるね。1人 Madeira っていうアーティストがいるんだけど… Michael C という名前で Stereo から作品を出していて、Tribo というレーベルを運営しているんだ。そのほかにも3人くらい新しい作品をリリースするアーティストがいてね。最近ではたくさんの若いアーティストが制作活動に取り込み始めていて、作品をリリースできるようなレーベルを探しているんだ。

TW : 1994年に "Underground Sound of Lisbon" がリリースした 'So Get Up' が大ブレイクしたことによって、ポルトガルのシーンは変化したと思われますか?

DJ Vibe : もちろんさ。誰もあんなことが起こるなんて予想していなかったんだ。Tribal UK がレコードをリリースして、Junior Vasquez にリミックスされて、世界中のDJがプレイしていたからね。間違いなくポルトガルのシーンを広く伝えるきっかけになったと思うよ。それがきっかけでみんながポルトガルやリズボンに興味を持つようになって、僕たちにもやる気を起こさせることになったしね。

DJ Vibe Interview

TW : 現在では、多くの若いプロデューサーがあなたのトラックをサンプルしたり、カヴァーしていますが、それについてはどのような意見を持ってらっしゃいますか?

DJ Vibe : いいと思うよ。新しい音楽をつくるために、サンプルは大切な要素だからね。気にしないよ。アーティストが僕のトラックを気に入って、サンプルをしても、それはリスペクトを表しているようなものだから、いいと思うんだ。僕は気にしないよ。

TW : 今でも Rui Da Silva と一緒に仕事する機会はあるのでしょうか?

DJ Vibe : 随分長い間ないね。彼はイギリスに行ってしまったし。この間つくったレコードは、レコーディングのために僕がイギリスへ行ったんだ。次の作品では彼がポルトガルに来てくれる予定になっているんだけど、それ以降まだ一度も来てくれてないから、実現するか分からないな。

TW : それでは The Underground Sound of Lisbon の再結成は…?

DJ Vibe : 将来的にメインのフォーマットになってくるだろうね。アナログが市場に残ると信じている人もいるし、もちろんそれも正しいと思う。ただ、ニュー・テクノロジーの可能性はすごく広くて、ただレコードをプレイするだけじゃなく、本当にいろいろなことが出来るのさ。最近は Traktor も使い始めたんだ。まず練習を重ねて、自信をつけてからじゃないと実践はしないんだけどね。

ニュー・テクノロジーは、素晴しいと思うよ。DJをする時の創造力を高める手助けをしてくれるように感じるんだ。だから将来的には間違いなくメインになってくるだろうし、トラックをプレイする以上のことが出来るんだからね。

TW : どんな機材を使ってらっしゃるのですか?

DJ Vibe : 僕が今使ってるのは パイオニアの FX と Cyc-loops。以前は Kaos も使っていたけど、今使っているのはその二つだけだよ。

TW : 使い方を少し説明していただけますか?

DJ Vibe : FX500 や 1000で、ディレイやエコー、フィルターを調節する。Cyc-loops では、リアルタイムにループを設定するんだ。

TW : オンライン・ショップでレコードを買われていますか?

DJ Vibe : そうだね。ウェブで MP3 を買ったり、レコードを注文してるよ。これもまた便利なことだよね。最近はほとんどの人がコンピューターを持ってるし、トラックの名前さえ分かっていれば、ネット上で探せて、すぐ手に入る。素晴しいと思う。待ったり、レコード・ショップに出向いたりしなくていいんだからね。ポルトガルにはそんなにたくさんレコード・ショップがないから、ほとんどのレコードが入ってこないんだ。だからかなりのトラックをインターネットで買ってるよ。

DJ Vibe Interview

TW : 特にヨーロッパではデジタル・ダウンロードの成長が顕著で、もはや無視できないほどの成長を、ものすごいスピードで遂げていると思います。将来的に、デジタル・マーケットはアナログ・マーケットを消滅させてしまうと思われますか?

DJ Vibe : どうだろうな。常にアンダーグラウンドなレーベルは存在しているしね。オンラインで楽曲を販売しているのは、何年も活動を続けてるような、すでに名前を知られているアーティストばかりだし。新しいアーティストは、ただ何枚かアナログをリリースしたいだけで、ダウンロード会社は今までのところ新しいアーティストとは契約を結んでいないみたいだしね。だからアナログはショップに残ることになると思うよ。そのアーティストが有名になれば、オンライン・ショップでもトラックが売られるようになるのさ。今のところ、アナログは新しいアーティストのために残されることになると思うな。

TW : リズボンの Kremlin でレジデントDJを務められていた当時は、日曜を除いたすべての夜にオール・ナイトでセットをプレイされていましたね。ロング・セットを得意とされているようですが、そのようなスタイルを何十年も保っていくために、精神や健康をどのように管理されているのですか?

DJ Vibe : たくさん寝ることだね!ただ、基本的に常に音楽に関わった仕事をしてきたから、音楽をプレイして、少し寝て、起きて、また音楽を聴いてプレイするってことは苦じゃないのさ。僕がDJを始めた頃にプレイしていたクラブは、夜10時にオープンして、朝5時か6時まで一人しかDJがいないことがほとんどだったから、僕はそうやって鍛えられながら育ったんだ。だから6時間回すことなんてなんでもないよ。

それに、Kremlin はポルトガルの町と、ナイトライフに大きな変化をもたらしたんだ。というのも、8時や9時、ある時は10時までパーティーが続くようになってね。次第にはそれが問題になって、夜の12時から4時までと、朝6時から12時までの営業時間を2回に分けなきゃならなくなってしまったんだ。その時は、クラブがダメになってしまうと思ったね。でも、結局お客さんは4時から6時までクラブの外で待って、また6時にはフレッシュな気持ちでクラブに入ってきてくれて、10時か11時までクラブに残ってくれるんだ。僕はそんな感じでキャリアを積んできたのさ。ハウスやテクノ、ヴォーカルものといったいろいろな音楽をロング・セットでプレイする…僕にとってそれはすごくナチュラルなことで、すごくシンプルなんだ。

イギリスやアメリカのDJはそういうプレイの仕方をしないのは知ってる。彼らはただ同じスタイルで2時間プレイするんだ。それはそれでいいけど、5〜6時間のロング・セットで同じスタイルばかりがプレイされるのを聴いていたら、飽きちゃうでしょ。変化がないしね。だからセットの中で違うスタイルやリズムの音楽をプレイしたいんだ。フロアのクラウドを楽しませるためにね。

TW : Kremlin ではどのくらいの期間プレイされていたんですか?

DJ Vibe : 7年だよ。

TW : 7年ですか!?

DJ Vibe : そう、7年間だよ。クレイジーな思い出がいっぱいあるよ。

TW : 日本のファンにメッセージをいただけますか?

DJ Vibe : Session でプレイ出来てすごく嬉しいよ。サポートしてくれてありがとう、またすぐにダンス・フロアで会えるのを楽しみにしてるよ。ありがとう。

End of the interview


関連記事


関連リンク