HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

カッティング・エッジなサウンドで常にドイツのミニマル/エレクトロ・ハウス・シーンをリードし続けているレーベル、 Get Physical Music のオーナーの1人として知られているDJ T.。ドイツの権威あるクラブ・ミュージック誌 Groove Magazine の創刊や、ドイツの歴史的クラブ The Monza Club のオープンに関わるなどして古くからベルリンのダンス・ミュージック・シーンの隆盛に力を注いできたカリスマである。その DJ T. が、この度12月27日に行われる Get Physical Music 6 Years' Anniversary @ Warehouse702 に出演するということで、 HigherFrequnecy が来日直前インタビューを決行。 Get Physical の6年を振り返って、いつもカッティング・エッジな DJ T. サウンドがどんな環境でどうやって生み出されるのか、そして今週末に迫った Warehouse702 での来日公演への意気込みなど貴重な話を多数訊くことができた。

> Interview : Masanori Matsuo (HigherFrequency) _ Translation : Yuki Murai (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : レーベル6周年おめでとうございます!最近はトップ・レーベルとしての印象が強い Get Physical Music ですが、この6年間を振り返ってどうですか?

DJ T. : リリースのクオリティを保ち続け、懸命にやっていかなければいけない大変な仕事だよ。この短い期間に100タイトルもリリースしたというのも大変だったしね。 レーベルのこれまでの6年半の成り行きについては、期間を分けて話すことにするよ。

まず最初の1年半は、自分達しかいなかったし、曲も Walter が作ったものだけだったから、レーベルの音というものをしっかりと作ることができたんだ。周りからは「エレクトロ・ハウスとテック・ディスコの青写真」と呼ばれていたよ。 第2期は、 Lopazz 等の新しいアーティストがレーベルに参加して、レーベルの音とスタイルにより広がりが出て、アーティストのアルバムも出せたし、レーベルのコンピレーション・シリーズもリリースできた。 第3期が現在なんだけど、大きなインディペンデント・レーベルになるための第一歩を踏み出したところで、いい曲、エッジィな曲と思うものならどれでもリリースすることにした。この成果として、 Raz Ohara のアルバムをリリースし、こういった種類の音楽について深く取り組むことができるようになったんだ。 色々なことがあったから、せいぜい4年くらいにしか思えなくて、時が過ぎるのは本当に早いなと思う。 いろんなスタイルが現れて、マーケットはどんどん変わっていくから、僕達は常に新しいことをやり続け、変わり続けることで、時間の流れについていこうとしているよ。

HRFQ : ちょうど1年前に M.A.N.D.Y. へ同じ質問をしたのですが、あなたから見た Get Physical Music の運営体制やコンセプトを教えていただけますか?

DJ T. : 今でも、12インチをリリースし始めた時と同じく、良いクラブ・ミュージックを出していくことを目標としてるよ。クラブでの最新の流行りはいつもチェックしているし、僕達は皆世界中でプレイしているから、それをやるには最適な立ち位置だと思うね。こんな風にして Get Physical は発展してきているわけだけど、一方で新しいアーティスト、新しいスタイルにも力を入れているし、あとは "Body Language" と "Full Body Workout" に続き、新しいコンピレーション "Final Song" を年明けにラウンチするよ。これは、アーティスト達に自分が死ぬ前に聴きたい曲、もしくは自分の葬儀で使いたい曲を選んでもらった、本当にスペシャルなプロジェクトなんだ。ヴァラエティに富んだパワフルなトラックが揃ってるよ。あとは、リリースと同じ位、 Get Physical のブランド経営についても考えていて、僕達独自のブッキング / イベントエージェンシーを設立することにしたよ。そんな感じで’09年には色々なことが起こるだろうね。

HRFQ : Groove Magazine のボスを降りてアーティスト1本として活動する際、生活面での心配などはありませんでしたか?

DJ T. : いや、全く。実際のところ、音楽ジャーナリズム業界を離れ、音楽について考える側から、自分自身の音楽を作る側へと移るには丁度いいタイミングだったんだ。レーベルを始めてすぐに、僕の作品は本当に成功したし、DJとしてのキャリアも世界レベルに広げることができた。だから、こんなにいいことはないと思ってるよ。

HRFQ : 最近の Get Physical Music では1、2年前のモダンな "ミニマル" を通過し、フロア・ライクで踊れるサウンドが多くなってきていると感じますが、今後はこういったスタイルが主流になっていくのでしょうか?

DJ T. : そうだな、ミニマルと呼ばれているものは決して僕のフェイバリットにはなり得なかったってことは、言っておかなくちゃいけないな。ミニマル・ミュージックにはいいところが沢山あって、サウンドの作り方やドラムのプログラミング…特にキックとバスの部分については完璧に新しい方法論を作り上げ、エレクトロニック・ダンス・シーンに新しさを吹き込んだと思う。でもそれと同時に、色んなタイプのハウス・ミュージックが、新しい音のレンジを獲得して、ミニマル・ミュージックの独裁を崩し始めてることもいいことじゃないかと思うね。ダンス・ミュージックは今まさに、再びエキサイティングになってきたよ。僕はハウス・ミュージックの帰還を歓迎したいし、それと共に新しいムーブメントがおこって、音楽はまたウォームで、フレンドリーでセクシーになっていくんじゃないかな。この傾向は次の1〜2年の間続いていくと思うし、そしてまたゲームが始まるわけだ。

HRFQ : 楽曲制作はどんな環境で行っていますか?あなたの作品では他の模造品とは違った独自のグルーヴをいつも感じていますので、ぜひお聞きしたいです。

DJ T. : 僕の最近の12インチ3枚に関しては、新しいプロデューサーと組んでやってるよ。 Get Physical Music から出した 'Outbreak'、 Kindisch からの 'Booty Call'、 Poker Flat からの 'After Dark' だね。最初の2枚は Matthias Tanzmann と作って、 Pokerflat からの1枚は Ian Pooley が、 Booka Shade の Walter Merziger との作業をやる前までの段階を手伝ってくれたよ。僕の音の主な特徴はサンプリングを多用してるところで、それがグルーヴとビートをプログラムする際の目安になってるね。ハードウェアの話だと、僕の使ってる機材は毎回違うし、誰と仕事するかで違ってきてしまうんだけどね。

HRFQ : あなたの Myspace を観たのですが凄まじいツアー・スケジュールですね。楽曲制作はいつ行っているのですか?また、激しいツアー・ツアーにも絶えうる健康方などお持ちでしたらそちらもお聞かせください。

DJ T. : ナイト・ライフ業界で長いこと働いていると、健康を気遣うのは本当に難しいことだよ。僕なんてもう23年にもなるからね。仕事とプライベートのバランスをとること、必要な分休みをとることは決して解決しない問題で、僕自身も、平日オフも、週末のオフも滅多にとれないよ。平日はレーベルの仕事をして、週末はDJで飛び回ってるし、それでも少しはよくなってきたかな。残念なことに今現在、人生初なんだけど耳にちょっと厄介な問題を抱えていて、マレーシアでのオフをとる間に良くなることを願ってるよ。

HRFQ : あなたはDJとしてもカッティング・エッジなセンスをお持ちだと思いますが、現在あなた目線で旬だと感じるレーベルをいくつか教えてもらえますか?

DJ T. : 今年は、まだまだ歴史が浅いけど素晴らしいレーベルが随分活躍したね。全部の名前は言えないけれど例えば Cecille、 Oslo、 Ostgut Ton、 LiebeDetail、 Desolat、 Circus Company かな。それともちろん、純粋なハウス・レーベルとして発足した、僕達のセカンド・レーベルの Kindisch も結構活躍したと思うよ。

HRFQ : もうすぐ Warehouse702 での来日公演がありますが、日本の印象は?

DJ T. : 前回日本に行ったときには大きい都市にしかいけなかったから、国全体の印象を知りたいし、カントリー・サイドにも行ってみたいな。大都市にいる間に受けた印象としては、日本は基本的に良くも悪くも、本当に「消費者の国」だなという感じを受けたけど、その一方で、会った人達みんながものすごく親切で、ポジティブで…だから、このシーンにいる人たちに関しては、志も高いし、すごくいいイメージだね。

HRFQ : '09年以降のプランを教えていただけますか?

DJ T. : 僕のアルバムが6月に出て、そこから年末までの大規模なワールド・ツアーに出ることになりそうだな。 Get Physical ではさっき言った "Final Song" のようなコンピレーション・アルバムについてのビッグ・プロジェクトがあって、あとは Damian Lazarus、 Audiofly、 Koze、 Bronnt Industries Kapital なんかのアーティスト・アルバムやコンピレーションをたくさん出す予定だよ。

HRFQ : それでは、来日を心待ちにしているファンへメッセージをお願いします!

DJ T. : ダンスフロアで、みんなのビッグ・スマイルとダンスが見れるのを楽しみにしてるよ!

End of the interview


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