HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

DJ KOZE


HigherFrequency オフィスではヘビー・プレイ中の DJ KOZE によるアルバム "Kosi Comes Around"、 James Holden や Michael Mayer といった今をときめくトップ・アーティストからの支持を受け、全世界の注目を浴びながらも、あくまで "インディー感覚" にこだわったレトロな独自の世界が前面に出されたこの作品が、筆者をはじめとする多くのエレクトロニック・ミュージック・ファンの共感を受けたことは、ここで改めて述べる必要のない事実だろう。

そんなダンス・ミュージックという枠を大きく飛び出した自由な発想を持つこのアルバムをリリースしたばかりの DJ KOZE が、代官山UNIT で行われている kompakt night に出演するため、来日。HigherFrequency もそこで念願のインタビューを行い、ドイツのシーンについてや、アルバムについて話を訊いた。途中、James Holden が HigherFrequency とのインタビューで彼について語っていたと教えると、いきなり立ち上がってビールを一気飲みしたりと、お茶目な一面もみせた DJ Koze。後半にはアイロニーたっぷりな回答をしてくれたりと、非常に充実したインタビューとなった。

> Interview : Nick Lawrence _ Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : はじめまして、日本へようこそ。エンジョイされてますか?

DJ KOZE : 日本に来るのは初めてじゃないんだ。実はこれで3回目。すごく好きだよ。食べ物も、建物なんかもね。

HRFQ : 最近リリースされた "Kosi Comes Around" ですが、素晴らしいアルバムですね。アルバムのコンセプトについて少しお話していただけますか?

DJ KOZE : まず一つは、DJのためのアルバムをつくりたかった。だからアルバムの中には3〜5曲ぐらい、夜クラブでプレイ出来る様なトラックが入ってる。それと同時に、このアルバムは昼でも聴ける作品にしたかったんだ。世の中のテクノ・トラックには、ただフロア向けって感じのものが多いと思うんだよね。だから僕は昼と夜の融合を表現してみたかったのさ。

HRFQ : 今年は、Adolf Noise 名義でもアルバムをリリースされていますね。2つのアルバムをほぼ同時期にリリースするのは大変だったのではないでしょうか?

DJ KOZE : どうだろう。確かに賢いやり方ではないよね (笑)。実は、"Kosi Comes Around" の方は、Adolf Noise よりプレスの数が少なかったんだ。Adolf Noise の方は、かなりエクスペリメンタルで、不合理なアルバムなのに、そんなアルバムが "Kosi Comes Around"より多くプレスされるなんてちょっと不思議だったね。まぁ、こういうものなのかもしれないけど。

とにかく、二つのアルバムのアイデアが浮かんできたから、待たずにリリースしようとした訳だけど、どんな音楽も発表してから認知されるまでに時間がかかるものなのかもしれないね。違うシーンの人々の耳に触れて、人から人へと噂が広まって…という具合にさ。だから一つのアルバムが認知されるのには1〜2年かかるのかもしれない。だからこういう感じでいいのかもね、分からないけど。全く音楽をつくらないでいるよりかはマシなんだろう。これから5年間は何もリリースしないかもしれないしね。こんなリリースの仕方はなかなかないから。

HRFQ : Adolf Noise の他にもたくさんの名義の下でリリースされていますが、それぞれの名義の役割はどんなものなのでしょうか?

DJ KOZE : DJ Koze としては、テクノや踊れる音楽。Adolf Noise は、もっと自由でアブストラクト系の音楽をメインにリリースしていて、International pony では僕も含めた3人で活動しているんだけど、これはもっとポップな感じかな。僕たちのソウルやファンクといったサイド、ポップな要素が表れたユニットなんだ。僕はほとんど毎日音楽をつくっているんだけど、いつも違ったアイデアが浮かんでくるから、その日ごとにとってもポップなトラックが出来たり、アブストラクト系のトラックができたり、ダークなテクノ・トラックが出来たりするんだ。

DJ KOZE Interview

HRFQ : だからこのように違った名義でリリースされているんですね?

DJ KOZE : そう。名義を分けるのってすごく便利だし、はっきりしてて良いと思うんだ。成功しているバンドって、いつも同じような音楽をつくってるけど、僕にはそれが出来ないんだ。いつでも自分自身が楽しめるような音をつくっていたいし、同じ様な音を繰り返しつくるなんてすごく退屈だと思うんだ。だけど、違う名前の下で音をつくれば、いろいろな音にフォーカスしてリリースできる。もし一つの名義で活動していたら、誰も僕の音楽を理解してくれないだろうからね。だから違う名前でリリースする必要があったんだ。

HRFQ : 今までにたくさんのDJやプロデューサーにインタビューしてきましたが、James Holden や Michael Mayer など、多くのDJがあなたをフェイヴァリット・プロデューサーの一人として挙げていました。彼らのようなトップ・アーティストに注目されることについてどのように感じられていますか?

DJ KOZE : えっ?誰? James Holden ??(いきなり立ち上がってビールを一気飲みする)僕は James Holden の大ファンなんだ。彼のリミックスした "Sky Was Pink" は僕にとって去年のナンバー1トラックだったね。あのトラックにはやられたよ。すごいファンキーだし、良く出来てるトラックだった。まるで音の旅って感じだしね。James Holden はまさに時の人だから、すごく嬉しいよ!

HRFQ : では、知らなかったんですね?

DJ KOZE : 全然!僕こそ彼のファンなんだから。

HRFQ : James には会ったことがないんですか?

DJ KOZE : 今年2回会ったよ…バルセロナとケルンで。でも僕はシャイだから、ただ挨拶しただけで、他に何て言ったらいいか分からなかったんだ。

HRFQ : でも実はお互い好き同士だったって訳ですね。

DJ KOZE : そうだね。とにかく、彼は素晴らしいアーティストだよ。

HRFQ : アルバムに話を戻します。あなたの作風は "My Grandmotha"などのトラックにみられる様に、非常にレトロな印象がありますが、あの様なユニークな音をつくり出すためにどんな機材を使われているのですか?

DJ KOZE : そうだね。まずはヴォーカルかな。レトロな雰囲気を出す上で、あの女性ヴォーカルはとっても大きな要素になってると思う。デジタル機材はあまり好きじゃなくてね。生音と、デジタルのミックスが好きなんだ。レトロ過ぎでもデジタル過ぎてもダメ。デジタル機材でつくった音ってすごく冷たいと思うんだ。ラップトップだけでトラックをつくっても、全然深さや広がりのないトラックになってしまう。だからオーガニックな雰囲気のあるサンプルを使って音作りをしているんだ。このトラックに関しては、キレイな感じのトラックにしたかった。僕は High Llamas や Stereolab 、Belle and Sebastian が大好きなんだけど、彼らの音って、キュートな感じでキレイだよね。でも全然安っぽくないんだ。それはやっぱりメロディーが素晴らしいから。すごくユニークで特別なメロディーのあるトラックをつくろうとしたんだ。

HRFQ : そうですね、このアルバムにはそういった "インディー" な感じがよく出てると思います。

DJ KOZE : そう。ただの激しいテクノには飽き飽きしてるんだ。ただ、クラブに行くときはやっぱりテクノが聞きたいんだけどね。すごくドライだし、ミニマルであまり余計な音が入っていないし…だから、すごく没頭できる音楽だと思うんだ。でも、同時にすごくつまらない音楽にもなり得る。だからクラブに行って、ひどくがっかりさせられることもあるんだ。テクノは素晴らしい音楽にもなり得るし、酷い音楽にもなり得る。ヒップ・ホップは違うけどね。ヒップ・ホップはいつでもクールだよ。ヒップ・ホップにがっかりさせられることなんて無いんだ。もちろん好き嫌いはあるかもしれないけど、楽曲のクオリティーは高いし、テンポもいい。ただ、いいテクノ・トラックを見つけるのは難しい。型にはまらないテクノは好きだけどね。インディーなバック・グラウンドのある James Holden や、サイケデリックな Ricardo Villalobos なんかはいいね。DJではないけど Isolee も The Smiths た The Cure みたいなインディーのバック・グラウンドから来たアーティストなんだ。ただのバンギングなテクノより、何か違ったエッセンスが感じられるほうが僕の好みなんだ。

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HRFQ : 今夜のセットですが、どんな風になりますか?

DJ KOZE : 温かくて、ディープな感じのセットにしたいな。でもここのフロアってちょっと難しいんだよね。去年もここでプレイしたんだけど、ちょっと暗すぎたんだ。日本人はシャイなのかな?去年、フロアが温かい感じになるように、赤いライトをつけてもらうようにお願いしたんだけど、「明るすぎるとみんな踊らないから」って言われてしまったんだ。僕自身も、暗いほうが踊りやすいから気持ちは分かるけど。でも、暗いとお客さんとのコミュニケーションがとりにくいんだ。東京のクラブはみんなそうなのか分からないけど…昨日、La Fabrique っていうクラブに行ったんだけど、ここよりもっと冷たい感じがしたよ。それがいつもクラブでプレイするときに気になることなんだけど、だいたいテクノのクラブって冷たい感じがするよね。だから、温かい雰囲気が出るようなセットにしたいと思ってるよ。

HRFQ : ドイツのクラブでも同じような問題はあるんでしょうか?

DJ KOZE : もちろんだよ。裸で泥酔した奴らがクラブにやってきて、「こんなのヤダ!」って思ったり、朝の7時に「疲れたからもう帰るよ」って言えば、「え!?大丈夫?病院に行ったほうがいいんじゃない??」って言われたり…というのも、ドイツではだいたいパーティーが昼の12時〜2時まで続くんだ。Ricardo Villalobos や、彼の周辺のDJのパーティーなんかは、月曜日の4時まで続くんだよ。それにベルリンでは最近、金曜日から火曜日まで、ノン・ストップで続けられるパーティーもあるんだ。僕はもう若くないからついて行けないけどね。6〜8時間はプレイ出来るけど、22時間なんて有り得ないよ!それがテクノのニュー・スタイル…アフター・アフター・アフター・アワーズという訳さ。まるでモンスターだよ。そういうのは僕に合わない。僕の考えるグッド・パーティーの長さは、3〜6時間。3日間は長すぎるよ!

HRFQ : 最近では、全世界のDJが揃いに揃ってドイツ人プロデューサーの楽曲をプレイしています。こういったムーブメントはあなたのキャリアの向上に役立ったと思われますか?

DJ KOZE : そうだね。自分が今こういう音をつくっている事に、少し感謝してるよ。だから、役立っていると思う。すぐにビッグ・ウェーヴが起こるような予感がするんだ。ドイツのレーベルやディストリビューター、プロデューサーたちは、長い間、まっすぐなビジョンを持って活動してきた。ATA の Playhouse や、Kompakt みたいにね。彼らは、誰も相手にしようとしなかった時代から、ずっと活動してきているんだ。以前は少人数しかいなかったけど、今は大勢の人が彼らの音に注目している。中には、彼らがかなり長く活動していることを知らなくて、驚いた人もいるだろうね。Kompakt は100タイトル以上作品をリリースしているし、Playhouse からは80タイトル以上リリースされてるんだ。だからあと5年もすれば、状況は大きく変わってくると思うよ。今のクラブ・シーンでは、まだ Roger Sanchez や Armand van Helden、Sasha や Tiesto なんかがビッグ・ネームと言われてるけど、5年後には全く違った人々が彼らの座についていると思う。Alter Ego みたいにね。彼らは去年メイン・ストリームでもヒットを出したよね…だからそのおかげで、他のアーティストも外に出て行きやすくなったし。グラス・ルーツで成長していっている感じだから、いいと思うんだ。

HRFQ : あなたも Alter Ego の Rocker のようにメイン・ストリームにも認識されるような音楽をリリースできると思われますか?

DJ KOZE : いや、思わないね。それに、"Rocker"や" Geht's Noch"、James Holden のリミックス作品なんかは別格だと思う。このシーンでは1年に1回、もしくは3〜5年に1回ああいうメイン・ストリームでヒットするトラックが出るくらいだよ。

このシーンのアーティストたちはすごく速いテンポで音を作るんだ。1週間やそこらでトラックをつくってしまって、その8週間後にはアナログが完成してる。早いよね。ビデオや、MTV、ラジオ・プロモーションもいらない。ヒットさせようとしなくてもいいからさ。3000枚も売れば、みんなハッピーなんだ。すごくいいことだよ、だって僕たちが目指しているのはお金ではなくて、シーンを前にプッシュすること。だからたまに "Rocker" みたいに、4万枚売れるレコードが出てくると、みんなハッピーなんだ。僕たちには MTV も、大企業も、Crazy Frog の着メロも必要ないのさ。全く別世界の話だよ。

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HRFQ : 自分の音楽がメジャー・ヒットになることに不安を感じたりすることはありますか?

DJ KOZE : International Pony ではね。Sony Columbia に在籍しているし…彼らも売れると思って契約したんだと思うけど。だからそういうプレッシャーを感じるときもあるよ。日常茶飯事さ。メジャー・レーベルはセールスを第一に考えるからね。音はどうでもいいのさ。

HRFQ : International Pony としてのリリースはありますか?

DJ KOZE : 3月にニュー・アルバムをリリースするよ。あえて表現するなら、Crazy Frog をアシッドっぽくしたような音かな。

HRFQ : こちらも Sony からのリリースですか?

DJ KOZE : そうだよ。僕は両方の世界に足を突っ込んでるんだ。とってもインディーな世界と、メジャーな世界。インディーな世界の方が個人的には好きだけど、メジャーの方がお金が儲かる。International Pony はポップだから、メジャー・フィールドの方が合ってるのかもしれないけどね。

HRFQ : Adolf Noise や Fischmob としてのリリースはありますか?

DJ KOZE : いいや、かなり下降気味だよ。James Holden が気に入ってくれた時点が僕のクライマックスだったね。これからは(手でジェスチャーをしながら)こんな感じさ(笑)。

これから Josh Wink のリミックスをするところなんだ。彼の1998年のヒット・トラックで "Don't Laugh" っていうのがあるでしょ、それを再リリースするみたいなんだ。僕はB面で、A面では Alter Ego が"Higher State Of Consciousness"をリミックスするみたい。それくらいかな。

End of the interview


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