HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Desyn Masiello


今、プログレッシブ・シーンにおいて最も熱い視線を浴びているDJと言えば、この Desyn Masiello をおいて他にはいないと言っても過言ではないだろう。最近のトップDJの多くがプロデュースした楽曲の世界的ヒットをきっかけに、DJとしてのステイタスを築いてきたのに対して、この Desyn のキャリアにはそのようなオリジナル曲のヒットは見当たらない。ただ、数多くのレコードをディグし、その中から素晴らしい曲をチョイスし、自分のお気に入りトラックをエディットし、そしてそれらの曲をプレイする… このDJとしての基本的なプロセスのみを繰り返すことによって、ここ数年のうちに一気にワールドワイドなDJシーンを一気に駆け上がり、そして"Alternative Route"と "Sex On Wax"という二つのレーベルオーナーとしても大きな成功を収めるに至るのである。

昨年はその才能を認めた Bedrock から *Original Series*という新たなコンピCDの第1弾アーティストとしても抜擢され、その名をシーン全体に轟かせた Desyn Masiello。3月の上旬に行われた来日公演の際に行われたHIgherFrequencyとのインタビューでは、名前から何となく我々が想像していたスペインなまりではなく、流暢なイギリス英語で我々の質問に応えてくれた。

*このインタビューをビデオでご覧になりたい方は・・・ここをクリック!

> Interview : Matt Cotterill _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

triangle

HigherFrequency (以下 HRFQ) : 確か、以前来日されたのは昨年の1月30日でしたね。もちろん僕たちもそこにいたわけなんですが、一年ぶりに帰ってきていかがですか?

Desyn Masiello : とってもエキサイトしてるし、戻ってくることが出来てすごく嬉しいよ。お金を払ってもらって来れるなんて信じられないさ!日本に来る時は、いつも旅行みたいな気分になるんだ…でも今回はギグの後すぐに帰らなきゃいけないから残念だよ。今だって空港からここに直接来たんだよ…それでも、やっぱりこうやってプレイして人と交流できるのは嬉しいよね。

HRFQ : 本当に多忙ですよね…こういったDJツアーに加えて、Alternative RouteやSex on Waxといった二つのレーベルの運営をやられているわけですが…特にSex on Waxのリリース量にはものすごいものがありますよね!

Desyn : そうだね、これからMr CやDanny Howellsもリリースするし…

HRFQ : 現在進行中のリリースについて少し教えてもらえますか?

Desyn : Alternative Routeからは今後10タイトルくらいリリースされることになっているんだけど、実は、既に来年のリリース作品まで決まってるんだ!でも、リリース数については、よくレーベル・マネージャーに「もうこれ以上契約しないで」って注意されるんだよね。一体、誰のレーベルなんだ?って感じだけど(笑)。

Desyn Masiello Interview

HRFQ : どちらに決定権があるんでしょうか!?

Desyn : その通り(笑)。ただ、彼女はこの手のビジネスを長くやってる人だし、ブッキングやお金も管理しているから、僕も彼女を信頼してるんだ。だけど「もう契約しないで!」って言われるのはやっぱり辛いね (笑)。だって契約したいレコードがたくさんあるんだから!そういえば、最近、Osamuとの契約もしたところだよ。

HRFQ : Osamu Mですね。

Desyn : そうそう、Osamu Mだよ。

HRFQ : 'Waterdrop' というトラックですよね?

Desyn : そう。あれはすごく美しい曲で、リッチで雰囲気に富んだディープなプログレッシヴ系トラックなんだけど、突然オーケストラのようなブレイクダウンが入ってくるんだ。とにかくとても美しいレコードで、だから僕も契約したのさ。すごくオリジナルだし、魂が込められている感じなんだ。桁外れに素晴らしいトラックだよ。

Alternative Routeで心がけていることの一つに、ジャンルにこだわらないで契約するってことがあるんだ。ただプログレッシヴ・ハウスのレコードだけじゃなくて、ハウスだって、テクノだって、トライバルだっていい。ただ、その作品自体が素晴らしければね。

その他にもいくつか大きなリリースがあって、その中の一つに90年代初期のUKのレイブ・アンセムでN-joyのAnthemというトラックのリミックス・プロジェクトがあるんだ。で、そのリミキサーとして、無名のアーティストも積極的に起用していこうと考えている。Alternative Routeでは、出来るだけ新しいアーティストを発掘しようとしていて、特にリミックスに関しては、ただ"ホット"なアーティストではなくて、まだあまり知られていない、でも実力のあるアーティストに依頼することにしてるんだ。

もう一つ Alternative Routeで心がけていることは、ヒット作品をリリースすること。去年は"Ride"が大当たりしたけど、今年はさらにヒットを出せればと思ってるよ。ただ、ほとんどのリリースが無名のアーティストになるけどね。

一方のSex on Waxでは、これからDanny Howellsのシングルや、Mr.Cのトラックもリリースしていく予定だよ。Sex on Waxは、いわば僕自身や友達、そしてほとんどのオリジナル作品をリリースしてくれているOmid/16Bのためのレーベルって感じかな。

HRFQ : あなたが音楽の虫だという事実は広く知られていることですが…

Desyn : そうだね。ちょっとしたミュージック・フリークという感じかな…だから目の下にこんなクマがあるというわけ。でも僕にしてみれば、どれだけ睡眠時間が少なくても関係ないんだ。だって、どうせ一日のほとんどをコンピューターの前に座って過ごしてるんだからね。今は本当に簡単にオンライン上で素晴らしいレコードをたくさん見つけることが出来るでしょ。だからインターネットにはホント感謝してるんだ。だってインターネットのおかげでわざわざ外に出てレコードを探し回る必要が全くなくなったんだから。例えば、このドイツの「deejay.de」っていうサイトなんて素晴らしいんだよ。まぁ、ドイツ人っていうのはなんでもキッチリやるんだけど、このサイトではボタンをクリックするだけで、例えばベネルクス地方とか、イタリア、フランスといった国の全ての新譜をチェックすることが出来るんだ。フランスからリリースされた何百ものレコードがいっぺんに見れるなんて……「ワオ!」って感じだよね。まさにDJの夢だよ!!だから、ずっと家に引きこもっちゃうってわけさ。

Desyn Masiello Interview

HRFQ : 今までにどのくらい太陽を見ないで過ごしたことがありますか?

Desyn : うーん…何週間っていう単位かな!!太陽を見ないで…そうだね。何週間もあるよ (笑) 。でも、最近は気をつけるようにしてるけどね。ただ、世界では毎週何千っていうダンス・ミュージックのレコードがリリースされていると思うんだけど、その中で500枚しか聴けてないとしたら、「くそっ、乗り遅れてるぞ」って気がしてしまうんだ。だから、結局全部聴かないと気がすまないんだよね(笑)。僕の回りにもそういう友達がたくさんいて、一緒にトラックを聴いたりしてるんだけど、とりあえず全部カヴァーするようにしてるよ。

ただ、ハウス・ミュージックに関して気付いたことは、あまり言っちゃいけないのかもしれないけど、最近リリースされているハウス・ミュージックのほとんどが駄作だということ。というのも、今のテクノロジーがあれば、誰でもコンピューターを使ってそれなりの"ハウス・ミュージック"をつくれてしまうからね。確かに、コンピューターが発達したおかげで、誰でも音楽を簡単につくれるようになった。でも、人間の創造力はどんどん低下していると思うんだ。だから、すごくスペシャルな作品は今でもリリースされているんだけど、それにめぐり会うまでがすごく大変なんだよね。これだけ音楽を探すのに時間を費やしているのも、別に音楽に憑りつかれてるからではなく、本当にいいレコードに出逢いたいだけ。でも、いいトラックを見つけるのは本当に難しいんだ。

HRFQ : あなたのオフィシャル・サイトには、「僕は色々なジャンルの音楽を聴いて、そこからアイデアを得ている。でも、その内のほとんどは、クラブでそのままプレイして現代のダンス・ミュージック・ファンを踊らせることが出来るようなトラックではないから、そこでPro toolsや、Ableton liveといったテクノロジーをつかって、エディットをしなおしたり、ビートを早くしたりして、僕が考える今のクラブ・ミュージックのビジョンに近づけているんだ。」というコメントが掲載されていますね。また、「クラブに来ている今の若い世代たちは、自分が見つけてくる楽曲に対していい反応をしないだろう」といったニュアンスのコメントがされていましたが、そう思われた理由は何ですか?

Desyn : そこで僕が言おうとしていたことは、僕の見つけてくる音楽のほとんどは、クラブでそのままプレイすることが出来ないってこと。エディットし直すことが必要ってことなんだ。例えば、ブラジリアン・カーニバルのレコードをそのままクラブでかけようと思っても、第一に、ミックスが難しいし、とてもそのままプレイできるようなものじゃない。だからオリジナルのトラックの上にさらにキックを重ねて、パンチを加えてミックスが出来るようにするんだ。よく探せば、ダンス・ミュージック専門のレコード・ショップ以外にもクラブでプレイできる曲はたくさん置いてあるんだってことを言いたかっただけさ。

HRFQ : 最後に、普段使われているニュー・テクノロジーについてお伺いしたいのですが…

Desyn : 正直言って、今はLiveさえあれば充分だと思うよ。僕の周りにもエディットの為に、Pro Tools や Logic、Cubase を使っている人は大勢いるし、僕自身も昔全部使っていたことがある。でも、Live を使い始めて1年経つ今では、他のソフトは一切使わなくなったんだ。まさにあれは王様さ。まぁ、機能面だと他のシーケンス・ソフトには多少及ばないのかもしれないけど…と言うのも、Pro Tools や Logic には専用のプラグインやエフェクトが付いていたりするからね。でも、Live のすごいところは、AからBの作業をする時のそのスピードなんだ。例えば、あるトラックのテンポを完璧に合わせて取り込みたい時…それは生で演奏された70年代の曲かもしれないし、The Clash みたいに完全にライブな音かもしれない。で、それをPro Toolsに取り込んで加工しようとすると、3日間ノンストップでテンポを合わせる必要があるのに対して、Live だとほんお1時間ほどで出来てしまうんだ。テンポを合わせてトラックを取り込むことに関しては、他のソフトより50〜100倍は早いと思うし、エディットではそういった作業がメインになってくるからね。スピードと使いやすさを重点に設計されているし、DJ やエディットを始めてみたい人には、これが最適なソフトだと思うよ。

HRFQ : 短かったですが、お話できて光栄でした!この後のセットを楽しみにしています。頑張ってください!

Desyn : ありがとう!

End of the interview

関連記事


関連リンク