HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Der Dritte Raum Interview

ドイツ語で「第3の部屋」という意味を持つこのDer Dritte Raumは、基本的にはAndreas Krugerを中心に活動を展開するプロジェクトであり、元々はAndresとRalf Uhrlandtのコンビにおいて、90年代前半からテクノシーンで活躍してきたユニットである。昨年リリースされた"Klubraum"においても、ジャーマンテクノをベースにしながらも様々なサウンドが交錯するサウンドスケープを展開し高い評価を獲得。今回のWIRE04では、サブメンバーであるNielsと共にステージに立ち、その長いキャリアに裏打ちされた緻密なライブ・パフォーマンスを披露してくれたばかりである。そんなDer Dritte RaumにHigherFrequencyがインタビューを実施。彼の音楽感やライブのセットアップなどについて話を聞いた。

> Interview : Laura Brown (Arctokyo) _ Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 前回の来日からどれくらいになりますか?

Der Dritte Raum (DDR) : あまり良く覚えてはいないんだけど、確か前回来たのは4年前だったかな。初来日が97年で、2001年が2回目。だから今回が3回目の来日になるはずだよ。

HRFQ : あなたの音楽的なバックグラウンドについて教えてもらっても良いですか?

DDR : 子供の頃はピアノを習っていたんだけど、その後次第にエレクトロニック・ミュージックに興味を持つようになって、それらの二つの要素が一緒になる形で、1985年頃に最初のシンセサイザーを買って曲を制作するようになったんだ。ただ、僕はどちらかと言うと技術的なことがすごく好きだったから、サウンド・エンジニアとしてキャリアをスタートしたと言ったほうが良いかもしれないね。あとそれ以外に、小さなパーティーやハイスクールのパーティーなんかでDJもしていて、当時ハマっていたニュー・ロマンティックスやシンセ・ポップ、それにニューウエーブなんかをプレイしていたかな。で、その後しばらくして、ある友達と一緒に、16トラックのレコーディングが出来る小さなスタジオを作る事になって、そこでしばらくはファンク系やパンク系のバンドなんかのレコーディングをやったりしていたんだ。でも、91年ごろにテクノシーンに初めて出会ってからは、こう言ったパンク系のスタジオワークを全てやめて、「テクノ」と言う全く新しい音楽を制作する事に集中する事になった・・・それが全てのストーリーさ。

HRFQ : かつてコンビを組んでいたRalf Uhrlandtと分かれて、今はソロで活動されていますよね。他のアーティストとのコラボレーションで何か進行中のものはありますか?

DDR : このDer Ditte Raumはソロプロジェクトで、Ralfは全く関わっていないんだ。彼は彼で自分のやりたい事をやっているしね。面白い事に、Ralfと最初に知り合いになった時、彼は僕の持っていたスタジオのお客さんだったんだ。当時彼はDepeche Modeのコピーバンドをやっていてね。イギリスのシンセポップにすごくハマっていたみたいで、それもあってすぐに友達になったんだ。で、その後92年ごろから、一緒にライブ活動をやるようになって・・・でも、音楽はいつも僕が作っていて、彼はどちらかと言うとパートナー的な役割だったかな。だから、Ralfとは今でもライブでは共演しているよ。それに、去年からNeilsという2番目のパートナーが加わっていて、今夜のステージで一緒にプレイをしたのは彼の方なんだ。二人ともそれぞれ自分のプロジェクトを持っていて、Ralfの方はIndex IDという名義でElectroluxから作品をリリースしたりしているし、NielsもNeil Whiteという名前で活動している。みんな常に連絡を取り合っているし、全員ベルリンに住んでいて、それぞれ自分のスタジオで自分達の作品をプロデュースしているんだ。だから、僕がNeilsやRalfのプロジェクトを手助けする事もあれば、彼らが僕のDer Ditte Raumを手伝ってくれる事もあるって感じかな。

HRFQ : あなたのライブセットはとても有名で、特にあなた自身、テクノやトランス、ファンクなどのエッセンスを融合させて一つの独特なサウンドを作り出すことの出来る数少ないアーティストの一人としてその名を広く知られていますが、どうやってこれらの要素を違和感なく融合させているのですか?

DDR : いろんな音楽の種類や、スタイル、定義があるのは、一重に音楽について文章を書いている人が存在しているからだと思う。僕の知っている殆どのプロデューサー達は、自分達のやっているスタイルが何なのか、そんなに意識していないし、僕自身もそうだからね。僕的には、何がトランスで何がハウスなのかすらも正直言ってよく分かっていないし、自分のやりたい事をやっているだけって感じなんだ。まぁ、時には「トランスっぽいノリとハウスっぽいコードがクロスオーバーしている事」もあるだろうけど、でもそれも僕にとっては、自分が色んなスタイルの音楽が好きだからそうなっているだけで、何か一つのスタイルで表現するべきものではないんだよね。スタジオに入る時も、マシンをいじっているうちに何かが生まれてくるって感じだし・・・だから、最後に生まれてくるのが何なのか、また、それがどういった方向性を持っているのかなんて事は知る由もないし、それは僕にとって大して重要な事じゃないんだ。それに、殆どのスタイルが、ビートの構成やコードの展開、それに16分音符の入り方なんかによって定義されていると思うんだけど、トランシーな16分音符にハウス系のシャッフル・ビートが絡んでいたら、「あれは何だ」って決めつける事は出来ないでしょ。

HRFQ : 現在、DJとしてのレジデントは持っていますか?

DDR : 今回やったようなライブ活動は、一年を通してずっとやっているようなものではないんだ。年に3ヶ月か4ヶ月くらいの間だけ精力的にやるって感じで、それ以外は、友達と過ごしたり、スタジオワークをやったりと言った普通の生活を送っているよ。だから、毎週末どこかのクラブでプレイをしているって事もないし、いつも出かけていくようなクラブもないかな。

HRFQ : あなたの機材に関して教えてもらえますか?ライブセットの時には、いつもどのような機材を使っているのですか?

DDR : DJとライブセットの面白いミックスと言った感じかな。と言うのも、シンクロしていない二つのシステムを使っていつもプレイしているからね。2台のシーケンサーとリズム・マシーン、それにコンピューターが常に独立して動いていて、一方のシステムを走らせている時には、もう一方をリロードさせているって感じ。それをDJ みたいに自分の手と耳を使ってピッチをあわせたり、スタートやストップさせたりしていくんだ。あと、技術的な面で言うと、もう何年も2台のラップトップを使ってライブをやってきているし、ここ4〜5年くらいは全くスタイルを変えていないかもね。

で、そのラップトップにはAbletonのLiveがソフトとして入っていて、これに8チャンネルのオーディオ・インターフェイスと16チャンネルのミキサー、そしてTB303を加えたのが僕がライブをやる時のセットアップなんだ。だから、エフェクトのリターンをあわせると全部で24チャンネル使っていることになるかな。システムAが8チャンネル、システムBが8チャンネル(それにそれぞれのエフェクトリターン)って感じでね。あと、ベーシックなパート、例えば、キックやスネア、それにベースラインといったものに関しては、それぞれシングルのアウトプットに振り分けている。そうすることで、リロードの時間がとても短くて済むからね。5秒くらいで全てのリロードが完了して、もう1台のコンピューターがスタートして、24チャンネル全てが何かをプレイバックするようになる・・・。勿論、フェーダーが下がっているチャンネルは音が聞こえないから、実際にスピーカーから出てくる音は、セッションみたいな感じになるんだ。時にはリズムを抜いたり、ブレイクを作ったりしながらね。で、それらのリズムがループを演奏している間に、フェーダーやエフェクトを使いながら、いろんなアレンジを施していくというわけ。いわば、ミキサーを使ったジャム・セッションみたいなものかな・・・。時にはテープ・マシーンなんかも使うこともあるしね。だから、機材の良し悪しは余り重要じゃなくて、ミキサー上で行われる事が全てと言ってもいいんだ。

HRFQ : 今はベルリンに住んでいると聞いていますが、元々の出身はどこなんですか?

DDR : ドイツの真ん中にある Goettingenという小さな街だよ。学園都市として知られている街で、約50%の人が大学に関わる仕事をしているね。

HRFQ : ベルリンでは、どんなアート・フォームが最近伸びてきていますか?あと、何か音楽のトレンドみたいなものってありますか?

DDR : 難しい質問だね・・・。ベルリンにそういったトレンドがあるなんて考えた事もなかったし・・・。パーティーという事に関しては、週末は旅行客のためにあると言っても良いんじゃないかな。良いパーティーはだいたい平日にあって、しかも規模が小さいものが多いからね。だいたい200人くらいが入れるような、小さなイリーガル・パーティーが幾つか開催されていて、最初はエレクトロ・クラッシュから始まって、インダストリアル系がかかって、その後ハウス、みたいな感じのセットがプレイされているんだ。でも、いずれにしても、みんな一つのクラブに一晩中いるような事は少なくなってきたかな。みんな2〜3時間だけ居て、DJが面白くなかったら他の店に行ってしまう、みたいな感じで・・・。あと、個人的に面白いなぁと思うのは、Perlonみたいなレーベルがあるのも理由の一つかもしれないけど、ベルリンではやたらとテック・ハウスに人気があるって事かな。まぁ、これがベルリンのトレンドだとは言いたくはないけど、殆ど毎晩どこへ行ってもこの手のサウンドを耳にするし、他の国でこれほどまでにテック・ハウスが掛かっているところもなさそうだからね。

HRFQ : 日本とドイツでは、あなたの音楽に対する受け止められ方に違いを感じたりしますか?

DDR : 街で実際に起こっているような出来事でなく、あくまでクラブで起こっている出来事である以上、世界のどこへ行ってもそれは同じ事で、全世界共通のものだと思うよ。うまくは言えないけど、みんながクラブで踊っているのを見ている限り、それはベルリンやニューヨークでも同じだったし、メキシコシティーでもそうだったからね。

HRFQ : 日本のアーティストやプロデューサーからデモテープを受け取ることはありますか?

DDR : 日本には何人か友達がいて、特にTobyは日本とベルリン、フランクフルトをしょっちゅう行き来しているから、彼には一年の間に何度か会うことがあるんだ。で、彼の友達の中に日本で曲をプロデュースしている人間が何人かいて、お互いにデモテープを交換したりしているよ。

End of the interview

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