HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Death In Vegas


19歳にしてトラック一つとリミックス一曲でメジャーレーベルと契約を交わした Death In Vegas のキーパーソン Richard Fearless。これまでの13年間は、ミュージシャンとして確かに恵まれた道を通ってきた Richard であるが、現在では映画製作に精力的にエネルギーを注ぎ込む一方で、自分のバンドについては、殆どを自己資金で賄いながら活動を続けていると言う。

今のところ運はまだ彼を見放していないようだが、近々リリース予定のFabric Mix CDのパブリシティで行き詰まったことについて話した時には"お金がなさすぎて、もう一年は豆しか食べるものがない"なんてジョークも飛ばしていた。因みに今はNYに引っ越して、フォトグラフィーを教えながら学校に通っているが、ほんの18ヶ月前まで Oasis のニュー・アルバム(当時)のスター・プロデューサーとしてもてはやされ、更に13年前に BGM と契約したときと同じレーベルから、Death In Vegas 4枚目のアルバム「Satan's Circus」のリリースを心待にしていた時とは大違いの境遇である。また、かつてのアルバム「Contino Rooms」と「Scorpio Rising」には、Iggy Pop と Bobiie Gillespie、そして Paul Weller と Liam Gallagher といった豪華ゲストたちがそれぞれ参加していたが、そういった大物アーティストとの共演をやめようと Richard が心に決めた時、彼の完成したアルバムを受け入れてくれるレコード会社はいなくなってしまったのである。

『実際、契約面では別におかしなことにはならなかったんだ。ただ、メディアは好反応だったんだけど、ニュー・アルバムを渡したときから何となくおかしくなったんだよな。もちろん彼らには前もって「あんなに多くの人とずっと一緒にやるのは無理だ」とは言ってあったんだけど、特に「Scorpio Rising」のリリース以降は、もう音楽を作っているというより誰とコラボするかってことが中心になってしまってね。だから「いい加減にしろ!オレは'音楽'がやりたいんだ!」って言ってやったんだ。』

『彼らからは、シングル・リリース出来そうな曲が全然ないとか言われたけど、自分たちは出来上がったアルバムに満足だったし、却って自分のレーベルを立ち上げるチャンスでもあったから、彼らが諦めてくれて良かったと思うね。ただ、やっぱりレーベルを立ち上げるにしてもお金がかかるし、アルバムがリリースされても宣伝費もなかったしで、結局ほとんど固定ファンの人たちだけに売る羽目になってしまったんだ』

独立したのと期を同じく、Oasis も Death In Vegas とのセッションを取りやめ、Richard は豆好きになるべくNYへと引っ越すことになったわけだ。

『成功する為の方式なんていうのはそんなに難しいものじゃないし、その方式に従おうと思ったら、いつでもそう出来たんだけど、結局僕は妥協したくなかったし、その道は選ばなかったんだ。最初のレコード「Dirt」は世界中でかなり売れたし、そのまま続けていれば何かの最前線にいることは出来たんだけど、あまり興味がなかったって言うか…。どちらかといえば、お金がなくても自分のやってることにもう少し誇りを持っていたいっていう気持のほうが強いんだよね』

以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Eri Nishikami)

Skrufff (Jonty Skrufff) : このCDにはどのようなアプローチで臨んだんですか?

Death In Vegas : 僕が今ハマってることを一番良く表現したアルバムかな。特に最近のエレクトロ・シーンは回転が速くて、ほんの1、2年前にかけてた曲がありえないくらい古臭く聞こえるほど進化してるからね。ただ、今はニューヨークに住んでるけど、僕が感じる限り、ここのエレクトロ・シーンは最悪。最悪っていうか、そんなシーンは存在しないって言った方がいいかも。例えば、どこかでプレーするでしょ。そうすると皆「いやぁ〜今日はほんとに最高のパーティーだった!」なんて言うわけ。でも、ロンドンのFortressでやっている"Haywire"のパーティーなんかに朝の5時ごろ行って、みんなが気が狂ったみたいに躍っているのを見たら、彼らはいったどう思うんだろうって感じさ。とにかく、最近のアメリカやニューヨークでは「おかしくなる」ってことが、どういうことか理解されてないと思うな。
あと、デトロイトのシーンには何となく共感を覚えていたんだけど、この間行った時には、この街ですらアンダーグラウンドなシーンはどちらかといえば終わっていて、もう少し年齢層が高めの人が集まるバーなんかの方が盛り上がってるみたいだった。ある種、今のアメリカのクラブ・シーンを象徴している感じだったね。 

Skrufff : このCDはコンピューターと Ableton で作ったんですか?

Death In Vegas : いや、これはターンテーブルでミックスしただけだよ。

Skrufff : 今でもほとんどターンテーブルなんですか?

Death In Vegas : 他に何かあるっていうんだい? 15,000枚位のレコードがあるんだよ。ラップ・トップタイプの人間じゃないからさ。やっぱりレコードでしょ。

Skrufff : ニューヨークのエレクトロ・シーンが小さいと分かっていて、何故あえてニューヨークへ?

Death In Vegas : ニューヨークへ来たのはまず、ガール・フレンドが住んでるからってことと、映画音楽をやりたかったから。映画ビジネスといえばやっぱりロスだけど、あそこには住めないと思ったな。バンドもいいけど19歳の時からずっとやってきたし、Death In Vegas はもちろん続けるけど、もっと他にやりたいことがたくさんあるからね。それに今がいい時期なんじゃないかと。フォトグラフィーは勉強してるけど、今は映画のディレクションをメインにやってて、実際に今ストーンズにも関わってるんだ。

Skrufff : ストーンズっていうと…。

Death In Vegas : ストーンズだよ。ローリング・ストーンズ。「Sympathy for the Devil」って映画を撮ってるんだ。何ヶ月か前に売り込みに行って、やることになったんだけど、ここに来て初めてエキサイトできる映画のプロジェクトかな。

Death In Vegas Interview

Skrufff : ロンドンには帰っていますか?

Death In Vegas : 今はビザの関係でそんなに帰れないんだ。でも、ここではDJの仕事は全くないし、今までもアメリカ以外の仕事がほとんどだったから、今はとにかくビザの事をクリアにして、早く行ったり来たりが出来るようにしたいんだよね。

Skrufff : 19歳にしてメジャー・レーベルと契約を交わしたんですよね。あれが一番最初のリミックスだったんですか?

Death In Vegas : そうそう。まだカレッジに通ってた頃だけど、あのリミックスの前に作った「Opium Shuffle」ってトラックが Death In Vegas として出されたんだ。でも、そのシングルしかないって言うのに、レーベルがツアーをブッキングするもんだから「やばい!もっとレコードつくらなきゃ」って感じになって。それでレコードの契約も決まったという感じさ。まぁ、あんな形でバンドを始めるなんて思ってもいなかったから、変な感じだったな。やっぱり僕も Stooges や Velvet Underground とかのロックを聴いて育ってるんだけど、バンドをやることを目標に、もっと腰を据えてれば今とは違ったことになってたかもしれないね。

Skrufff : オアシスのアルバムのプロデュースをやるって話はどうなったんですか? やっぱりいろいろ難しかったんですか?

Death In Vegas : いや、全然そんなことはなかったよ。まぁ、最後のほうに多少ごちゃごちゃしたことはあったけど、それだけだね。一ヶ月かけてレコーディング済ませて、簡単に言うと、本当は12曲のうち5曲をプロデュースするはずだったんだ。で、どうせやるなら音楽を更にサイケなレベルにしたいと思ってね。交渉の余地もあると踏んだんだけど、良く考えてみたら相手は数百万ポンド規模の大企業でしょ。僕たちのバンドみたいなのが方向性を変更するのはアリだけど、そう簡単には行かなかいわけさ。それに楽譜上では良さそうでも多分彼らにとってはトゥーマッチだったのかも。ただ、別にエレクトロにしようと思っていたわけじゃないし、ジョージ・マーティン(ビートルズの伝説のプロデューサー)が「サージェント・ペパーズ」でやっていたようなスタジオ・アルバムにしようとしてたんだけどね。でも、あの経験はほんとに良い経験だったと思ってるし、もどかしいこともあったけど後悔はしてないね。

Skrufff : 現在19歳で、リミックスがあるからレコード会社と契約を結ばないかって持ちかけられてる人がいたらどんなアドバイスをしますか?

Death In Vegas : 僕がそうしたように、フィルムとアートワークの権利は自分で管理したほうがいいね。僕も契約書には全てのアートワークは僕がやったってことを書いてもらったし。レコードにとってカバーは重要だからね。僕にとっては自己表現できる場のひとつって感じだから。あとは、マネージメント力のある人を見つけることと、シングル・ゲームに巻き込まれないようにすること。皆ラジオでかかることとか、プレイリストに載るレコードを作ることが全てだと思ってるけど、くだらないね。 もうすぐメジャー・レーベルは個人で活動するアーティストが増えすぎて、どうしようもなくなるさ。パンク・ロックなんかまさにそうでしょ。 ディストリビューションも自分達でやって、インターネットで誰でもアクセス出来るようにしてさ。

Skrufff : Death In Vegasの今後のリリースは?

Death In Vegas : 既にレコーディングの終わったアルバムがあるんだ。5枚目のアルバムかな。Barbican のサイケなサーフ・フィルムをちょっと書き換えたんだけど、それがこのアルバムのルーツ。今はリミックスに取り掛かる時期を見計らってるんだ。今回は自分達でリリースするんだけど、本当に良いアルバムだと思うからプレスやプロモーションも出来るレーベルを探すかもね。どうなるかわからないけど、正直、今考えてることはそれとは違う事なんだよね。

End of the interview

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