HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Damian Lazarus Interview

「とりあえず売れてるプロデューサーかエンジニアに電話を入れて、スタジオに入る時間をセット・アップして、彼らと一緒にスタジオに入って、アイデアを出し合って、2、3日後にはヒットしそうなトラックを完成させることなんて、簡単に出来てしまうと思ったんだ。でもそれってちょっと簡単すぎて人を騙してるようなものだし、何よりも、人生のほとんどの時間を使って、楽曲作りやエンジニアリングにフォーカスしている人に対して失礼だと思ってね」

自らをまずDJであり、その次にレーベル Crosstown Rebels のA&R / レーベル・チーフであると表現する Damian Lazarus は、楽曲制作を行わないという彼のポリシーを、このように断固主張した。

「腕のいいプロデューサーが、名前を広めることだけを目的にDJをするのって、すごく迷惑なんだ。僕はここまで来るのに長年苦労してDJをして来たのに、プロデューサーが、一つヒットを出したのをきっかけにDJを始めて、あっという間に有名になってしまうなんて、かなりうっとうしいよ。だから、反対の立場から言えば、一日中コンピューターの前に座ってるわけでもなく、一日中スタジオにいるわけでもない僕が、いきなりプロデューサーとして活動し始めるのは、ちょっとフェアじゃないと思ったのさ。そうは言っても、実はスタジオに入って楽曲作りをすることもないとは言えないんだけどね。でも、それはどちらかというと趣味の程度だから。僕はどちらかと言うと、全体を監督して、アイデアを出して制作を助けたり、間接的にディレクションをするようなエクゼクティヴ・プロデューサーとしての仕事に興味があるんだ」

最近 Damian が「監督した」プロジェクトには、Resist の最新のコンピレーション"Bugged Out presents Suck My Deck"があるが、本作は、彼が最近 Crosstown Rebels からリリースしたミックスCDとは大きく異なった仕上がりとなったようだ。

「今までとは違ったことに挑戦出来た良い機会だったよ。さらにアンダーグラウンドなことが出来たし、みんなが好みそうなトラックを入れようとか、そういうことをあまり考える必要もなかったしね」

「僕自身をそのまま表現した様な作品さ。現在僕がプレイしている音や、興味のある音が詰め込まれてるんだ。アルバムに取り掛かり始めた当時は、ちょうど"Rebel Futurism 2"を完成させたばかりだったんだけど、Futurism シリーズの方は自分の中でミックスの仕方が定着してきた感じなんだ。このアルバムではもっとディープでダークな、夜っぽい音が表現できたと思うよ」



以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする。
(Translation by Kei Tajima)

triangle

Skrufff (Jonty Skrufff) : このミックスCDの収録曲の中で驚かされたのは、The Stranglers の"Love 30"でした。かなり珍しいトラックですよね。なぜこのトラックを収録しようと思ったのですか?

Damian Lazarus : このトラックは"Gold Brown"のB面に入ってた曲なんだ。"Gold Brown" は僕の家族みんなが聴いてきたお気に入りのレコードの一つなんだけど、僕はB面の"Love 30"が大好きでね。ただ、このトラックは、常にプレイしてみたいと思っていながらも、なかなか機会に恵まれなかったトラックだったんだ。それで、今回のミックスCDに入れてみようと思ったんだけど、これがきっかけになって、いつかギグでもプレイできるといいなと思ってるのさ。

Skrufff : プレイできるチャンスには既に恵まれたのでしょうか?

Damian : まだなんだよね。タイミングを見計らってるところなんだ。でももう夏になっちゃうからね。

Skrufff : 今夏はイビザの DC10 で何回かプレイされますよね。レジデントDJとしてプレイなさってるのですか?

Damian : DC10 とはちょっと妙な感じなんだよね。あそこには同じ "レジデントDJ" が長い間いるんだけど、彼らは新しくレジデントDJを加えたり、変えたりってことをしないのさ。でも、僕が DC10 でプレイし始めてもう3年になるし、何をプレイしてもOKってことになってるんだ。毎年、シーズンの初めにプレイしたい日程を僕の方から渡して、それから一緒にスケジュールを調整していくんだけど、今シーズンは7月を除いて月に2回ほど日程が決まってる。結構頻繁にプレイしてるから、お客の中にはレジデントDJと思ってる人もいるんじゃないかな。あと、今年はSpaceでも何回かプレイするよ。

Skrufff : 最近のイビザについてどう思われますか?

Damian : イビザには以前から何回か行ってるけど、レーベルという立場に立って、レコードを広めるために重要な場所としてイビザを考えるようになったのはここ3、4年のことなんだ。あれは確か2001年だったかな。Thin White Duke のリミックスした Felix The Housecat の "Silver Screen"をリリースしたことがあるんだけど、イビザや DC10 といったクラブの真のパワーを実感したのは、そのときが初めてだったね。何人かのDJにそのレコードを渡していたんだけど、ラスト・トラックとしてテラスでプレイされたときはすごくスペシャルな感じがして、その時に、その年の夏以降や翌年にダンス・ミュージック・シーンで流行るものは、毎年イビザでプレイされるんだって実感させられたよ。だから、イビザは個人的にも仕事の面でも、とても重要な場所なのさ。あそこには今、本当にたくさんの新しいエネルギーが流れ込んでいるように感じるんだ。今のところ具体的な話を進めているのは2、3のクラブしかないけど、いずれにしても僕にとってあの島は特別な存在だね。

Damian Lazarus Interview

Skrufff : そういえば、最後にあなたのプレイを見たのは昨年の Manumission でした。

Damian : そうだね。そこでパーティーをやっていた友達のサポートとして出演したんだ。イビザにあるクラブの中でも、僕が今重要だと思うクラブは DC10、Cocoon、それに Space。この3つは、間違いなく一歩先を行っているクラブだと思う。僕がDJとしてプレイしたり、レーベルでリリースしていたり、今回の "Suck My Deck" に入ってるようなサウンドを耳にすることが出来る場所なんだ。

Skrufff : 最近のイビザの音楽についてはどう思われますか?音の幅が広くなってきているように感じられますか?

Damian : ついさっき Babyshambles のマネージャーと電話で話してたとこなんだけど、彼らも今年の夏は Manumission のパーティーでプレイすることになるらしい。イビザではいつも新しい音のアイデアが試されていて、その中には上手く行くものもあるし、失敗に終わるものもある。ただ、今ひとつだけ確かなのは、テッキーなエレクトロ・ハウスのサウンドが、イビザのトレンドになりつつあること。こういう風にある音楽スタイルが盛り上がってくると、必ずアンダーグラウンドなクラブからはみ出して、徐々にメインストリームのクラブへと広がっていくものなのさ。

Skrufff : 楽曲プロデュースをしないで、DJとしてのキャリアを築いていくことは通常より大変だったのではないかと思うのですがいかがですか?

Damian : その通りだよ。以前、結構名前の知れてるDJから、「一曲売れる曲を出さないと、ビッグなDJにはなれないぞ」って言われたことがあるんだ。その言葉の意味を良く考えてみた時に、有名になるにはDJのスキルとかアートってあまり関係ないことなんだなって気付いたし、DJとして有名になるには相当の時間がかかるだろうなって思ったものさ。でも、何でもいいからトラックをつくって、有名になるよりかはずっと価値のあることだと思ったんだ。

もちろんスタジオに入って、プロデュースのプロセスを学ぶことはすごく意味のあることだと思う。でも、さっきも言ったように、僕はレコード・レーベルを運営しているし、音楽を心から愛する者として、そして同時に音楽でビジネスをしている者として、毎日をアーティストと過ごしたり、新しいアーティストを発掘したり、アーティストの楽曲作りを手伝ったりしてるんだ。その意味で、僕はすごくいい立場にいるんじゃないかな。作品をリリースしていないから、レーベルのどのアーティストとも敵になることはないからね。レーベルとしてアーティストを100%サポートし、彼らのトラックをプレイして回りながらそのリアクションを持ち帰って、それをもとに次のトラックをプロデュースするのを助ける…。そして自分の名前を載せることなく、レーベルから彼らのトラックをリリースしているわけだから。

確かに、過去には「有名になりたいか?」「どのくらいエゴを出したいか?」って考えてみたこともあるさ。でも結局は、自分の今やってることに満足しているんだ。いつだって僕はやるべき理由のあることをやってきたし、もし自分が楽曲のリミックスやプロデュースを始めたら、そういったバランスを崩すことになって、周りの人々も混乱させてしまうだろう。だから、そういうことはしたくないんだ。ただ、ここでハッキリさせておきたいのは、僕の最終的な夢はアルバムをつくることだということ。音楽に傾倒している人なら、結局のところ誰もがそう思うはずだよ。だからこそ最近僕はミックスCDに重点を置いて仕事してるんだ。それが僕にとって、クリエイティヴな "音楽プロデュース" と呼ぶべき作業だからね。違うのは人の音楽を使ってアルバムをつくっているという点だけさ。

Skrufff : DJについてですが、もうレコードから Ableton Live に乗り換えられたのですか?

Damian : いいや。レコードはずっと使い続けるよ。もちろんいろんなニュー・テクノロジーもセットに取り入れてはいるけどね。Ableton にだって興味はあるし、プレイだってするけど、基本的に僕はヴァイナル・ジャンキーなのさ。世界中をレコードでパンパンに膨らんだレコード・バックを引きずって歩いてたとしても、それが僕がDJという仕事をしてる証拠なんだ。それに、ステージ上で e-mail をチェックしてると思われるのも嫌だしね。

Skrufff : 70歳になってもDJしていると思われますか?

Damian : 最近、誰かともこういう話をしてたんだけど、実際のところ答えはノーだね。でも、今活躍しているDJの中には、すでに50歳を回っている人だっているし、Francois K. や故 John Peel 氏 のように、称賛を受けるべき本物のアイコンはいると思う。僕にとって音楽ない人生なんて考えられないけど、70歳になっても Fabric でプレイしているかどうかはまだ分からないね。プレイしてないと考えるほうが自然だけど、でもそれが僕が長くDJという職業に関わっていくつもりがないという意味ではないんだ。今のところはまだ若いから、ラッキーなことにまだそんなことを心配しなくてもすんでるというだけさ。

End of the interview

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