HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Blaze Interview

昨年、イギリスの名門ハウス・レーベル Defected Records の記念すべき100タイトル目を Barbara Tucker をフィーチャーしたトラック 'Most Precious Love' で飾り、その変らぬ人気と実力を証明してみせた Josh Milan と Kevin Hedge からなるベテラン・ハウス・ユニット Blaze が、同曲をタイトルに据えたベスト的な内容の日本編集アルバム “Most Precious Love:Blaze Essentials” のリリースに併せて2年ぶりとなるジャパン・ツアーを行った。西麻布の老舗クラブ Space Lab Yellow で行われた東京公演では DJ セット、ライブ、そしてヴァイオリニストの金原千恵子との共演と、あらゆる場面で圧倒的なパフォーマンスをみせつけたことも、当日会場に詰め掛けた多くのファンにとっては記憶に新しいだろう。

そんな全く勢いが衰えることを知らない彼らに HigherFrequency ではインタビューを敢行。 20年近いキャリアを誇り、15年もの間ルームメイトだったという深い絆を持つ Josh と Kevin の二人が、“Most Precious Love:Blaze Essentials” のことから、クラブ・シーンの伝説 Larry levan、そして自ら「マジカルだ」と語るスタジオでの二人のコミュニケーションについてまで、ベテランならではの深みのある話を聞かせてくれた。

> Interview : Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation : Kyoko Maezono _ Introduction : Yoshiharu Kobayashi (HigherFrequency)

triangle

Higher Frequency (HRFQ) : 今日はお忙しい中ありがとうございます。

Kevin : 光栄だよ。

Josh : 大丈夫。

HRFQ : 今回お聞きしたいのは、Victor ジャパンからリリースされる CD ”Most Precious Love” についてです。このタイトルのシングルは既に知られていますが、アルバムについて教えてください。

Kevin : 実はこの CD は、King Street の Hisa が監修してくれたんだ。僕らがここ数年の間に出したオリジナルとリミックス曲を集めたもので、一緒に仕事をした Slip n Slide や他のレーベルからの作品が収録されている。レーベルの間では、僕らのサウンドがとても上手く解釈され表現できているコンピレーションだって好評だよ。リリースが決まってエキサイティングだね。多分これで9枚目かな。数えてないけど。

Josh : コンピレーションとしては5枚目の Blaze 作品になるよね。

Kevin : リミックスや何らかの形で関わった曲で、この5年間に僕らが手掛けてきたもののコンピレーションなんだ。

HRFQ : ‘84年に活動を開始されてから人気が衰えることなく、寧ろ毎年人気は少しずつ右肩上がりになっている様に見えます。これはどうしてだと思いますか?

Josh : なんだろうね、俺にもわからないけど同感だよ。

Kevin : そう思う?

Josh : ああ。My Space に登録したらさ、My Space 知ってる?(mixiの英語版のようなもの)俺のページに毎日誰かが足跡を残していくんだよ。なぜなのかはよくわからない。歌詞がポジティブだからとか?どうしてかは知らないけど、ありがたいね。

HRFQ : お2人に対する関心は目下上昇中ですよ。

Kevin : ホント?君の言葉を鵜呑みにしていいの(笑)?

HRFQ : コンピレーションに名前をよく見かけますよ。

Kevin : Josh と俺はものすごくラッキーで恵まれていると思う。この20年で沢山の曲をレコーディングして、持っている曲目はオリジナル200曲にリミックス300曲くらい。これって全部聴くには気が遠くなる量だよね。つまり、おおよそ500曲の作品があるってことだから。自分の仕事への興味や情熱を失わずにここまで続けられたのは、ただラッキーだったからとしか言いようがない。でも、もっと人気が出るといいね。今よりもさらに上を行く日が来るのが楽しみだよ。

HRFQ : あなた達が作曲とプロデュースを手掛けた De’ Lacy の ’Hideaway’ は、300万枚以上の売り上げを記録しました。アーティストとして、セールス数千枚の壁を突破するシングルを作るのは難しいとよく聞きますが、どう思いますか?

Kevin : 音楽業界すべてにおいて言えることだと思うけど、一般的な購買スタイルが変わってきているんだよね。音楽業界で商売している者にとって、競争相手は自分たちとスタイルの似たユニットでもないし、違うジャンルのユニットでもない。インターネットにテレビ、映画、プレステや iPod といった、あらゆるメディアとエンターテイメントとも競争しているんだ。音楽業界は、巨大なエンターテイメントというフィールドのほんの一片にすぎない。エンターテイメントで儲ける戦いが過熱する中で、消費者も自分のお金を賢く使う知恵を見につけてきているしね。ちょっと価値のある曲やボーナストラックを1,2曲収録することで、アルバムを買わせ続けてきたレコード会社に騙されていたってみんな気がつき始めている。昔みたいに本当に優れたアルバムをつくる努力をしていないこともね。Motown、Earth, Wind and Fire、Stevie Wonder やその他にも Sting や Police の様なアーティストたちは1曲や2曲に頼らない、いいアルバムを作ろうとしていたと思うんだ。

HRFQ : Stardust や、Funky People など別名義でのプロジェクトもいくつか手掛けていますが、音に特徴があるので聴いた人はあなたたちの作品だとすぐに分かってしまうそうですね。それでも別名義を使い分ける理由は何でしょう?

Josh : あれは完全に Kevin のアイディアだから。俺はノータッチだよ(笑)。

Kevin : なんだろうね。Blaze はソウルフルなヴォーカルやヴォーカル・インストルメンタルの作品で、自分達を表現し続けてきたっていうのは常に感じてたことなんだ。だから、それとは違うサウンドを追求したくて別名義が生まれた。もちろん、大半の人はそれが Blaze だって知っていたけど、それも想定内だったよ。全く違うスタイルのことをやるなら名前を変えた方が、Blaze ファンに受け入れてもらいやすいって思ったんだ。

その効果は十分にあったね。俺たちは、普段とは全く異質のサウンドを受け入れてくれるファン層を獲得した数少ないプロデューサー/作曲家のチームになった訳だから。フロアで125BPMの4つ打ちだけを期待しないお客さん達に、’Found Love’ や・・・、あとは

Josh : ‘Here With Me’とか。

Kevin : そう ‘Here With Me’ も、Blaze ファンにとって ’Do You Remember House?’ や ’Most Precious Love’ と同じくらい人気のある曲だよね。メインストリームの人達は本当の Blaze を知らないのかもしれない。’Most Precious Love’ の僕らだけを見ていたらわからないと思うな。JVC からのアルバム ”Spiritually Speaking” や ”Keep Hope Alive” を好きな Blaze ファンは分かってくれてるよ。どちらの音も同じくらい支持してくれている。

Blaze Interview

HRFQ : ‘80年代初期からずっとチームとしてやってきたお2人に、お互いと上手くやっていく秘訣みたいのを教えてほしいのですが。方向性について意見が衝突することだってもちろんあったわけですよね?

Josh : そりゃあね。でも友達であるっていうことは、ビジネスにも何にも変えられないくらい大切なことだからね。簡潔に言うとね。プロデューサー同士は、仕事で出会っても友達にはなれずに、あくまでもただのビジネスパートナーのままで終わるのが普通だし。

Kevin : あまり知られてないことだけど、僕らはルームメイトだったんだ。

Josh : 15年間もね。

Kevin : 僕らの音楽活動とほぼ同じ期間だよ。始めた頃は若くて、Josh は僕よりデカイけど弟みたいな、作曲する仲間以上の存在になった。しょっちゅう一緒にいたし、若い頃は興味の対象も似ていたよね。女の子をナンパするとか、そういうことだけど。一緒に音楽をやり始めて、僕が彼にハウスを、彼が僕にジャズを教えてくれる様になったのがスタート地点で、公平なギヴ&テイクの関係だった。今は2人ともただの年寄りだけどさ(笑)。

HRFQ : 今では、スタジオにいる時のコミュニケーションは楽ですか?以心伝心みたいな。

Josh : 間違いないね。

Kevin : 全くそのとおり。

Josh : よく考えるとすごいよな。俺たちの会話って言葉じゃなくて、アイコンタクトだけだからね。

Kevin : スタジオで一緒に仕事することがある他の人には、ありえないって言われるよ。お互いが趣味で聴いている音楽がなんとなくわかったりとか。最近、これ聴いてるでしょ?みたいな。

Josh : マジカルだよな。

Kevin : お互いの考えていることが、ちょうどその瞬間にわかる感じだね。そこから信頼が生まれることもある。彼が始めたプロジェクトが、俺が最初に聴いたものとは違っていても、口出ししないでそのまま任せておく。最終的には、奴は俺の好きな曲にしてくれるって信じているからね。

HRFQ : さっき、他の人達がスタジオにいる時の話をされていましたが、お2人の強い精神的な絆の間に入り込むのは大変でしょうね。

Kevin : 残念なことに、歳をとるにつれて2人揃って他の人をプロデュースすることが少なくなってきているんだ。俺たちの仕事の手順の大半は、2人で作曲してプロデュースした曲をアーティストに渡して、どちらか1人がそのアーティストとスタジオに入る。2人でアーティストと一緒にヴォーカルをやることは滅多にないよ。俺があれこれ口出ししなくても、Josh はちゃんとできるからね。でも彼がいる状況でヴォーカリストが思い通りに歌えない時は、俺がイライラしちゃうんだよ。俺1人の時はそう感じないのに。俺は別に芸術的でも何でもないから、その人のあるがままにやらせようって思えるんだけど、2人でいるとアーティストを自由にさせてあげられないっていうか・・・。でも1人だけ例外がいるよね。

Josh : Stephanie だろ? うん、そうだね。

Kevin : Stephanie はヴォーカルと作詞面で、スタジオにいる時にすごく俺たちと上手くやれるアーティストで、俺たちが素晴らしいって思いこんでいる曲をそのまま形にしてくれるんだよな(笑)。彼女とは、いつも楽しく一緒に仕事させてもらっているよ。大抵は曲をつくって俺たちのどちらかがヴォーカルをやる。Josh はストレスになるからヴォーカルのプロデュースはあまりやらないんだ。

Josh : 人にやらせるくらいなら、俺が自分でやりたい方だからね。待たないといけないし、やり方を教えるのを繰り返すのは時間がかかり過ぎるよ。

HRFQ : Paradise Garage について1つ質問があります。 たくさんの人が Larry Levan の重要性について語っていて、例えば Manuel Gottsching は、彼の音楽は Paradise Garage への感謝の思いから生まれたものだと先日言っていたのですが。

Kevin : 彼の曲で俺たちが知っているのは ”E2-E4” のみだけど、他にも沢山作品を出しているよね。あの曲は ’80年代初期のものだけど、今聴いても時代のずっと先を行っている曲だと思う。まるで最近出来た曲みたいだよな。

HRFQ : お2人にとっても Paradise Garage は重要なものだったんですか?

Kevin : 俺は Larry に憧れていたし、同じ愛情を Garage にも持ちながら育ったよ。でも正直な話、彼は他の人から影響を受けていたし、当時は似た様な音楽をやっている連中が大勢いたんだ。でも彼は Garage を商業的に最も成功させたことで、誰よりも賞賛された。Miles Davis や Charlie Parker だって、似たことをやっていたけど、彼らが持っていたようなメディアへのアクセスがなかったから有名にならないまま終わってしまったのさ。なぜ Larry がシーンで重要視されているかと言うと、彼こそが DJ のスーパースター・カルチャーを築いた男だからだよ。彼は、DJ という職業をただ人がレコードをかけるだけのものから、アーティストとして認められるまでに導いた。彼は DJ をアーティストにしてくれたんだ。音楽的にはオリジナルじゃなかったけど、俺の見解では彼の一番の貢献は DJ をアーティストにしてくれたってことだね。

Garage そのものの重要性は、俺たちのカルチャーを創造した場所だってこと。それ以前にも、ロフトみたいなクラブの前身となった場所があったけど、Garage の商業的な成功は世界中に向けてのいい手本になったんだ。本当にそれ位重要だったんだよね。お客さんのファッション、クラブに行く時の話し方や振る舞いの手本を含めた、そういったユートピア的なアイディアはハウス・ミュージックとクラブでのライフスタイルからきていて、Garage で生まれたものなんだ。だから Garage=Larry っていうイメージができたけど、実際には Larry だけのものじゃなかった。元々の構想は Michel Brody のものだったし、そこで働いていたスタッフや、あそこを特別な場所にするために貢献した人達みんなのものだった。Larry はスターで、DJ としてスターの地位を切り開いたんだ。

Josh : 俺はまだ若すぎたから、Garage には2回しか行ってないよ。自分達のショーでも2回行ったけどね。Garage 以降に、Larry のセットを聴く機会があったんだ。意外に思われるかもしれないけど、俺はクラブ・シーンにはそこまで興味がなくてね。でも彼みたいに色んな音楽をかける DJ は初めてで、あの夜は Curtis Mayfield やスローな曲をかけていた。それがものすごく俺にとっては大切な意味を持っていて、俺の音楽観を変えることになった。ああいう曲をクラブでかけられるんだって気がついた時、全く新しい世界が開けたんだよ。

HRFQ : インタビューはこれで終了です。今日はお話を聞かせてくれてありがとうございました。

Josh : ありがとう。

Kevin : こちらこそ。

End of the interview


関連記事


関連リンク