HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Benjamin Fehr

93年よりドイツ、フランクフルトでDJとしてのキャリアをスタートし、現在はベルリンを拠点に活躍する Benjamin Fehr。複数のラジオ番組でレギュラーDJを担当し、またフランクフルトを中心に各地でゲリラ的不法イベントを開催するなど、アンダーグラウンドシーンの真髄で活動をしてきた過去を持つ。'02年には自らクラブの運営を手掛け、Ricardo Villalobos や Zip, Roman Flugel, Akufen, Lawrence, Luciano といったアーティストを招聘した。やがて Radio X にて自身のレギュラープログラム Catenaccio をスタートさせると共に、'04年には同名のレーベルを設立。「暗黒のグルーヴ」 をコンセプトとした、ディープでダークなトラックをコンスタントにリリースしており、今後要注目のアーティストである。

今回、盟友である Someone Else と共にブッキングを受け、初来日を果たすこととなった彼にインタビューを敢行。同じドイツ内でのフランクフルトとベルリンの違い、今後の活動に対する意気込みなど、彼の真面目かつ熱い人柄が覗える内容となっている。

Interview & Translation : Hidehiko Takano
Introduction : Midori Hayakawa (HigherFrequency)

triangle

-- 今回は初来日となりますが、日本、東京に対してどのようなイメージを抱いていますか?

B.F (Benjamin Fehr) : 日本、東京を訪れるのは初めてだから、色んなことに興味があるよ。東京は、とても巨大で未来的な都市で、大勢の人たちがひしめきあうように生活しているイメージがあるね。僕らヨーロッパの人間から見た場合に、昔ながらの伝統的な要素と、モダンなスタイルが混在しているところがとても興味深いんだ。 日本人の多くは、(ヨーロッパと比較すると)しっかりと音楽を聴いていて、先進的で奇抜なスタイルのサウンドにのめりこんでいる印象があるね。YMOとか、ノイズシーンとか、エレクトロニックミュージック全般についてね。そういうところが好きなんだ。

-- お客さんにここを見せたい!とか、滞在中にこれを見たい・体験したいといったことはありますか?

B.F : とにかくあちこち歩き回って街の雰囲気を楽しみたいかな。もちろん音楽シーンについても、レコードカルチャーの現状にも興味あるから、レコードショップは「行きたいところリスト」には入ってくるよ。いわゆる観光もしたいね。美術館とかアートギャラリーとかに行くような。後は、色々と珍しい食べ物にトライしたいね。日本食は好きだけど、ヨーロッパで味わえる日本食はほんの一部に過ぎないから、本当に珍しいものはまだ食べたことが無いんだ。 お客さんに対しては常に好奇心を持って、新しい音楽や刺激に対してオープンでいて欲しいと思うね。自分は、自分なりの解釈のエレクトロニックミュージック、 (僕自身のレーベル Catenaccio Records のテーマでもある)“Groove Noir” を表現したいと思っているよ。ダークでディープで、実験的なテイストを持ったエレクトロニックミュージックをね。

-- 今回の公演に Someone Else も出演しますが、Someone Else に対してどんな印象をもっていますか?また、どのような間柄ですか?

B.F : 彼はエレクトロニックミュージックのシーンにとってとても重要な存在だよ。僕は彼のことが大好きなんだ。彼のとてもユニークな作品や、彼が主催しているレーベル Foundsound のスタイルがね。とても思慮深い性格で、作品づくりがとても精密なんだ。実は僕の住んでいるところから2ブロック離れたところに住んでいて、ベルリン在住の他のアーティスト達と同様に、いわゆるご近所さんなんだ。一緒に夕食を食べたり、クラブで会ったり、彼のドライなユーモアが大好きだよ。とにかく、最高な仲間さ。

Benjamin Fehr

-- 日本では、ベルリンと比較して、あなたの活動初期の本拠地であるフランクフルトについての情報が少なく、Cocoon Club についてくらいですが、当初のシーンの状況、そしてそれからの変化、及び現状を教えてください。

B.F : フランクフルトにはアートスクールに通っていた頃、93年から04年まで住んでいたよ。常に大きなシーンはあったけど、スパースターみたいなプロデューサーが活躍するシーンで、僕に合うようなシーンはあまり無かったんだ。Sven Vath や Dorian Gray のホームグラウンドだった Omen みたいに大きなクラブがいくつかあったけど、もっと実験的な音楽となると、自分達で場所を確保してパーティをやらないといけない状態だったから、目立たないビルとか色々な怪しいロケーションでシークレットなパーティを開催していたよ。当時は州の規制がそれほど厳しくはなかったしね。
あとは、海賊版のラジオ番組も手がけていて、自分達が追究していたエレクトロニックミュージックを放送していたよ。

フランクフルトにいた当時の自分が最も影響を受けたのは Roman Flugel、Zip といったアーティスト、Klang, Playhouse、Perlon といったレーベルだね。 また、01年、02年とその Roman Flugel や Zip の他、Krystyna やHeiko MSO と一緒にレジデントを務めていたクラブ Robert Johnson も重要な場所だったね。02年には Kiosk というクラブを運営して、僕が好きなアーティストをブッキングしていたよ。逆に、Cocoon Club なんかは全然興味が無かったね。

-- 活動の拠点をフランクフルトからベルリンに移すに至った経緯を教えてください。

B.F : 死に行くフランクフルトのシーンから離れたかったんだと思う。ベルリンは自由の街なんだ。多くの人たちが自分の思い通りに生きていけるんだ。勿論、生活費がとても安いというのもあるけど、色んなアイディアやクリエイティビティが街中に満ち溢れているし、他のドイツの都市と比較して煩わしい規制が少ないしね。 90年代に起こったテクノ・ムーブメントとか、アート、クラブシーンに触れるため、またベルリンの壁が崩壊してからの東西の変化、成長を見るために頻繁にベルリンを訪れていたから、ずっとずっと憧れの街だったんだ。

アートと音楽の融合を追究するレーベル “Elektro Music Department” の存在も僕にとっては重要だったかも。ベルリンは僕にとってヨーロッパの中で最も興味深い都市のひとつだし、世界中のどこよりも多くのエレクトロニックミュージックのプロデューサーがいる街なんじゃないかな。近所のレストランとかスーパーで憧れのスターと会えるのが好きだよ。クリエイティブな人がそこら中にいるんだ。まあ、時々、発信者の方が受信者よりも多いんじゃないかなって気はするけどね。

-- ドイツ人として、現在ベルリンには様々な国から大勢のアーティストが集結していることについてどのようにお考えですか?ドイツ人にとってベルリンに移ることと、他の国からベルリンに移ることでは違いがあるように思うのですが?

B.F : とても喜ばしいことだよ。是非、おいで!って感じ。僕らはみんな音楽を創っているけど、快適な街に甘えてしまって、こもりっきりにならないためにも、互いの考えを交換し合えることはとても重要なんだ。だから、誰が来ようとも歓迎だよ。人種は関係無いし、あらゆる新しい影響やインスピレーションを受けるのは良いことさ。どこの国からのものだろうとね。

Benjamin Fehr

-- あなたが手がけているレーベル Catenaccio Records はイタリア語の名称であることが珍しいと思うのですがそのネーミングの由来を教えてください。

B.F : 僕にとってイタリアはずっと思い入れがある特別な国なんだ。何度も行ったとがあるし、文化が好きなんだ(だからこそ、メディアを実質的にコントロールしつつある最悪なリーダー Silvio Berlusconi によって、あの国が政治的に右傾し、ファシズム化し、素晴らしい歴史を持っているにも関わらず、負の歴史に逆戻りしつつあることは悲しいんだ)。

Catenaccio という名前は60年代にイタリアのサッカーチーム Inter Milan によって確立されたサッカーの守備のシステムから取ったんだ。正確に実践するためにプレーヤーはシステムに対する正確な理解と結束が必要なんだ。イタリア語で catenaccio は鎖とか閂といった意味があるんだ。Catenaccio Records はスポーツについてではないけど、社会的システムの結束を意味するんだ。色々な人が結びついていって欲しいんだ。

-- 多数のレーベルが乱立する中で、Catenaccio Records はどのような点でオリジナル・ユニークだとお考えですか?

B.F : レーベルは音楽や思想のスタンスを示すフィルターであるべきだと思うから、独自のスタイルを持つことは常に重要なんだ。僕にとっては “Groove Noir” がレーベルのコンセプトであり、最終目標なんだ。音の響き、暗闇、ディープなグルーヴと刺激的で覚醒的なアイディアによってダンスフロアーで実験を繰り広げるんだ。Ricardo Villalobos、Butane、Bruno Pronsato、Falko Brocksieper、Fym et Diane を始めとする大勢のアーティスト達が目標達成に向けて協力してくれているよ。

-- アーティストとして、またレーベルオーナーとして今後の活動予定を教えてください。

B.F : まず、Catenaccio Records では、自身の作品 'my favourite shop is me' の Bruno Pronsato (Perlon、Thesongsays) と Pikaya (Meander、Cadenza) によるリミックスをリリースするよ。他には Mike Wall、Dana Ruh (Brouqade) の作品を収録したミニコンピレーション "gruppenzwang prt II" や、Bitume というベルリン在住のフランス人女性アーティストの作品もリリースするよ。凄くユニークでアブストラクトな作品で、s-max(Boogizm、Telegraph)によるリミックスが収録されるよ。 プロデューサーとしては、11月にロシアのレーベルNervemusic から Seuil によるリミックスと併せて作品を発表する予定で、他にもデンマークの Tic Tac Toe Records からの "do what you lie" というEPや、Lomidhigh Lmtd、イタリアの Microlabel Lmtd といったレーベルからのリリースも決定しているよ。後は、来年の発表に向けて自身初となるLPを製作中だよ。 親友の Falko Brocksieper との共同プロジェクトである THE RESULT としては今年7月に CATENACIO からリリースした "Niagara EP" に続いて Brouqade Records からの新作や、Tic Tac Toe Records、Nervemusic といったレーベルでのリミックスを手がけるよ。

-- 最後に、サイト読者に向けて何かメッセージをお願いします。

B.F : いつだって真剣に!楽しいだけじゃなくてね。

End of the interview





NOVEN presents blue source 03
2009年10月16日 (Fri) @ club axxcis
Door : Y4,500(1D) _ W/F : Y3,500(1D)

LINE UP :
【Guest Live】
Someone Else (Foundsound Records, Philadelphia US)

【Guest DJ】
Benjamin Fehr (Catenaccio Records)

【Resident DJ】
Kiyoshi Inoue (NOVEN)

【DJ】
Ryuji Suganuma (freebase)





関連リンク