自主制作のスピーカーを持ち込み展開される迫力のサウンドと、そこから繰り出される真摯なメッセージが幅広い支持をあつめるクルー・Jah-Light Sound System。毎月第一日曜の夕方、代官山 SALOON にて開催されているパーティーは今年7月に6周年を迎え、これまでにも Rhythm & Sound や Tikiman、SCUBA、Moritz von Oswald Trio など数々のアーティストとも共演しているほか、UNITのアニヴァーサリーパーティーにもここ数年連続出演を決めている。さらに、これまでのフライヤー集やサウンドシステムの設計図を通して、6年間のクルーの軌跡をたどる展示会も開催中だ。
70年代のジャマイカで生まれ、今では数多くのスタイルに分かれるレゲエの中でも、特にスピリチュアルな側面が強い「ルーツ・レゲエ」。それが、UKへの移民の手によって打ち込みとなり発展した「ニュー・ルーツ」と呼ばれるムーヴメントをしっかりと基本におきながら、現代の日本から発信することにこだわって表現を続けている Jah-Light Sound System の姿勢と活動には、日ごろあまりレゲエというジャンルとの接点が少ない読者の方にも共感し、考えさせられる部分があるのではないだろうか。今回はクルーを代表し、セレクターの Jah-Lightに語ってもらった。
Interview : Naoki Koizumi [ADDACT]
―― まずはじめに、現在のルーツ・レゲエのスタイルに確立するまでのDJをされた経緯から教えてください。
Jah-Light : 19歳の時、"Blue Beat" というスカのレギュラーイベントに参加したのがきっかけでDJ活動スタート。始める前はカセットテープに録られたスカ、ロックステディ、ルーツ・レゲエを良く聴いていて、その時に King Tubby やLee Perry といった 70's のダブという音楽も、特に意識することなく聴いていた。
そこから21歳になって代官山某レコード店で5年間働いていた時は、職場の環境もあって様々な音楽を知ることが出来た。だからか、その時はプレイするジャンルもいろいろと浮気気味で、ジャズ、ブラジル、ソウルといった生音から、アブストラクト、2ステップ、ドラムンベース等の打ち込み音楽まで幅広くプレイしていて、その中でも特に興味を持ったのがベースカルチャーミュージックだった。その後、心機一転2002年から約2年半の歳月を経てサウンドシステムを制作の後、2004年 "Jah-Light Sound System" でレギュラーイベントを開始。今年の7月で6年が経つ。
―― ルーツ・レゲエという音楽に魅了された出来事、また表現者として活動する事になった1番のきっかけなど。あなたとルーツレゲエの出会いはどういったものだったのでしょうか?
Jah-Light : 青山にあった "MIX" というクラブで "MIGHTY MASSA SOUND SYSTEM" を体感してから、全てが変わったような気がする。いわゆるベースカルチャーミュージックの枠を軽く超えた桁外れの低音。今まで聴いていた昔のレゲエとも違って、打ち込みスタイルな ルーツ・レゲエ というところがとにかく新鮮で、しかも昔のジャマイカではなく、イギリスの現在のスタイルだと知ってからは、いても立ってもいられず2001年ロンドンへ。そこで完全にノックアウト状態。いくつかのサウンドを回ったが、スピーカーの数もさることながら、サウンドごとにプレイされる曲がとにかく個性的。ダブプレートといわれるリリースされていないスペシャル音源でプレイすることを売りにしているサウンドが多く、ハードもソフトも含めてまさに現場でしか聴くことの出来ない究極の空間。そこで、MCもしくはDJがマイクを持ち Conscious、Rightious、 Equal Lights といった視点から、現代の様々な問題についてのメッセージを曲にのせて説いていく。人間のルーツをテーマとしているだけにこのジャンルには終わりが無いと思った。
―― 偏にレゲエといっても、ルーツ・レゲエの他にダンス・ホールやラヴァーズといった種類があると思います。あらためてレゲエという音楽の文化について教えてください。またどうあるべきとお考えですか?
Jah-Light : 70年代にジャマイカで "Reggae" という音楽が生まれてから、のちに様々な形でカテゴライズされていく訳ですが、大きな違いとしてはメッセージの違いで、ラヴァーズ ならば恋愛についてだったり、ダンスホールであれば世事や風刺、スラックネスが主だ。ルーツ・レゲエ に関しては、ラスタの思想が強く少し宗教的ともいえる。
80年代に入るとターンテーブル2台を使用した2デッキスタイルが出てくるなど進化の過程は各々違い、ジャマイカではダンスホールが主流となり、ルーツ・レゲエはダブと共にイギリスへ渡った。80年代以降は多くのジャンルがテクノロジーの進化と共に、それまでの生バンドというスタイルから打ち込みスタイルへの変換期でもあって、先進国イギリスへ渡ったルーツ・レゲエとダブも同様、90年代初頭には革新的な形を打ち出し "New Roots" ムーヴメントが生まれた。とはいっても、音色が打ち込みに変わっただけで、メッセージの内容やスタイルは基本的には変わっていない。未だにターンテーブル1台のみでのプレイスタイルは2台が常識の世代から見れば意外に思うかもしれない。ただ、ラスタマンにとってのサウンドシステムはいわゆるディスコでは無く、もう少しスピリチュアルな儀式のようなものらしい。
自分としては、国も人種も違う人間がここ日本で発信していくならば、まったくの物まねではママゴトだし、基本がブレたら別物になってしまう。だから、ラスタの思想についてすべてを理解出来ないにしても解る範囲で現代の状況と照らし合わせながら表現を試みていきたいと思っています。
―― スピーカーを自主制作されていて、それを毎回会場まで運びパーティをされていますが、そこまでDIYにこだわる理由はなんでしょう?
Jah-Light : やはり音の違いが大きな理由かな。他とは全く違う存在感というか。あとは、自分の頭の中に創造したものを指先を通じて楽曲を作り、スピーカーからの出音をイメージしながらミックスを録る。そして、楽曲をチェックするモニターがサウンドシステムということになればこの一連の作業から生み出される曲は、他とは絶対違うだろうなと。ソフトからハードウェアまで、ある程度自分で作っていくことで、機材や音に対しての理解が深まればそれだけ自分でコントロールできる振り幅も広くなる。だから可能性が絶えることが無いのだ。ここ最近は、スタイルも曲調も"○○っぽい"といった曖昧なものが良しとされている時代かもしれないが、自分としては正直その現状に飽きていて、そういった時代に突き付けるアンチテーゼとしては"自分の音はこれです!"とハッキリさせた方が分かりやすいと思ったから。
―― それでは Jah-Light Sound System のクルーについてお聞かせください。ご自身以外の参加しているアーチストをご紹介いただけますか?
Jah-Light : セレクターは、NessiLL、Shinis と自分を含めた3人で、マイクは Sonshi-MC、アートワークは Drawize、サウンドクリエイターの Vytal、ウェブ担当は Maz、その他にもスピーカーを運ぶクルーが数人いる。NessiLL は自身のオーガナイズする "submeditate" というイベントで、アブストラクト、ダブステップといったアンダーグラウンドなDJ活動もおこない、Shinis はレゲエバンド "Oscar Sound" でミックスエンジニアとしての経験から、自身の楽曲制作& Dub Mix までおこなうダブクリエイターだ。Sonshi-MC はもともとヒップホップの MC で "cubex" (E.D.O)としての活動を経て、Drawize はクラブイベントやレゲエの野外イベントでライブペイントの他、オリジナルプリント T-Shirts も展開中。Vytal は、今年の4月に 1st 7"single をリリースしたばかりの若きクリエイターだ。ウェブ担当の Maz はお仕事でもプロのサイト師といった、さまざまなジャンルの人たちで構成されている。普通レゲエのサウンドクルーというと皆が当たり前にレゲエ好きなのはもちろんのことだが、逆にレゲエシーンの中で新たな存在感を打ち出していくには、別のジャンルの人間が入る事で、今までの固定観念を破っていく事が出来ると思った訳だ。

―― Jah-Light Sound System におけるアートワークの殆どを Drawize が手掛けているようですが、ご自身が制作をされることもあるのでしょうか?
Jah-Light : 自分ではほぼ無いです。殆どはイベントの内容に応じてイメージを伝えて、Drawize が形にすることが多いかな。毎月のイベントなので内容の変化が少しでもあれば、それを最大限にフライヤーで告知することは重要だと思っていて、そのデザインと内容のリンクがなければ広告として成り立たないものだとも思っている。しかも、今までのレゲエのフライヤーとは一味ちがった現代的なイメージが絶対的なので、Drawize とは毎月いろいろ考えながら取り組んでいる。
―― その昔、現 Jah-Light Sound System のクルーも含めて他にもたくさんのアーチストが参加していた 幡ヶ谷ROCKERS というのがありましたが、現在でも活動はされていますか?
Jah-Light : 現在は活動してませんが、渋谷区幡ケ谷在住のドラムンベースのDJが集まって自然発生したイベントで、その時のメンバーで現在もドラムンベースのシーンでDJやMCで活動を続けてる人もいれば、地元北海道に戻って現在サウンドシステム制作中のクルーもいる。"幡ヶ谷ROCKERS" の名前はその後、北海道の旭川に流れ着きBarの看板になって現在営業中。ここ2年位は幡ヶ谷ROCKERS & Jah-Lightプレゼンツで年5回位のペースで "LIGHTNING FLASH" というレゲエイベントを開催中です。そして、先月はイベント後日にスピーカー制作を手伝ってきました。完成までもう少しといったところです。
―― 少し話題を変えて。これまでに SCUBA や Moritz von Oswald Trio など数々のアーチストと共演してきましたが、あなたが思うベストパーティは"いつ""どこで""誰と"行ったものでしたか?おそらく、SALOONで開催しているホームでのパーティが1番だと思いますが(笑)。
Jah-Light : 確か2004年、まだサウンドシステムを作る前だったのでJah-Lightに名前を変えて間もない頃、ドイツから Rhythm & Sound と Tikiman が西麻布 Yellow に来日した。外タレの前座は初だった事もあって印象的だった。オープニングのDJだったのでお客さんはほどほどでしたが、Tikiman がひとり大盛り上がりで、プレイが終わった後、"クールだったよ!"みたいな感じで声をかけてくれたのが嬉しかったな。あとは、恵比寿ガーデンホールで毎年ゴールデンウィークに開催されている Ska Flames のライブイベント "Down Beat Ruler" で、Mighty Massa Sound System と Jah-Light Sound System を合体させてB1Fガーデンルームでブッ放せたのは気持ちよかった。低音の振動で、天井の小窓が全部開いたり、上からホコリが舞い降りてきたりと耐震テストみたいでおもしろかった。

―― では、あなたが影響を受けたアーチストを挙げてください。
Jah-Light : 1人目は "Mighty Massa"。日本ではNew Rootsのパイオニア的存在で、キーボーディストであり、レコードのバイヤーであり、サウンドマンであり、アーティストでもあるといった経歴の持ち主でとにもかくにもこの人から始まっている事が多い。
2人目は "Aba Shanti-I"。ロンドンでは人気の高いサウンドシステムで、選曲はもちろんサウンドシステムのパワーとクリアなサウンドは圧巻!まさに低音で空気が揺れる感じを初めて体感した。あとこの人の凄いところは、サウンドマンであり、ダブのミックスエンジニアでもあり、なんとレコードのカッティングエンジニアでもあると知ったときは恐れ入った。のちに自分の持っているレコードで*ABA*とサインが刻印されたものを見つけてビックリ!
3人目は "Iration Steppas"。イギリスの北部にあるリーズを拠点に活動しているサウンドマンで、クリエイタ-であり、ミックスエンジニアでもある。ここのサウンドのテーマは "西暦3000年スタイル" ということでかなりサイバーな楽曲が多く、"これもレゲエなのか?"と思うくらい当時はセンセーショナルだった。イベントにくるお客さんも黒人というよりは白人が多く、このカルチャーを他人種に広めた貢献は大きい。また近年は、ダブステップの若手アーティスト達をフックアップするようなイベントも行っているなど、常に新しいシーンを見ている。
―― 現在音楽界でもデジタル化が進み、DJもレコードだけでなくCDやPC…とアーチストによってそのスタイルは様々です。「レコードは音が良い」「PCでも音質は変わらない」という具合に人それぞれ意見がある中で、あなたはどのように考え感じますか?また ダブプレートとしてリリースするヴァイナルにこだわる理由はなんでしょう?
Jah-Light : テクノロジーの進化で今現在は、いろいろなメディアを消費者は選ぶ事が出来る。ほんとに便利な世の中で、レコードしかなかった時代にDJをはじめた人たちと比べるとDJに対する感覚も少しは変わっているのは確かだ。その時代時代を象徴するメディアで新しい事を作り出すことはむしろ自然な流れだと思っているし、それが時代の音として歴史になっている。
ただ、いつの時代にしてもどのメディアをとっても他人と同じような方法でアピールしても個性は薄いし、その時代そのメディアでしか出来ない自分だけの方法を見出さなければ注目もされない。そうなってくると何を選ぼうがその人次第ということだ。個人的な意見としてはアナログとデジタルで音の違いは好みだが、長時間録音するのであればレコードよりもCDの方が音質の変化と劣化も少なく優れていると言える。シングルなど短時間の録音であればレコードの方がサウンドシステムでは明らかに鳴っている。だから個人的にはシングルでのリリースはアナログにこだわっている。
―― 最後に、パーティでの楽しみ方について。クラブやパーティに行った時、どのように楽しむべきとお考えですか?
Jah-Light : 気持ちに遊ぶ余裕があるときに、行くのが一番かな。楽しみ方はその人自体が何を求めているかにかかわってくるものだとも思うし。 自分たちのイベントは、音の大きさから気持ち悪くなる人もいたり、体調悪いと長時間いられないという人もいるので、体調万全じゃないともたないかも。
Thanx !!!
*J-L*
End of the Interview
[Event Information]
■ 2010.06.08 (Tue)~2010.07.03(Sat)
*JAH-LIGHT EXHIBITION* @ HATOS BAR, Tokyo
>> more info
■ 2010.07.03 (Sat)
UNIT 6th Anniversary "DREAM MATCH" @ SALOON, Tokyo
■ 2010.07.04 (Sun)
*Jah-Light* Sound System 6th Anniversary @ SALOON, Tokyo
[HigherFrequency - Audio]
>> Jah-Light の エクスクルーシブ・ミックス音源を公開中
hrfq code 005 Jah-Light "Real Roots Sound"
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