Plug Interview

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思い返してみれば、90年代中盤から後半にかけての Luke Vibert は、時代の半歩先を行っているような面白さがあった。94年に Wagon Christ 名義で送り出したスモーキーなブレイクビーツ・アルバム “Throbbing Porch” は、DJ Shadow のブレイク、もしくはトリップホップ隆盛の前触れのような作品だったと捉えられなくもない。そして、翌年から始めたドラムンベースへの挑戦や、その一つの集大成として96年に Plug 名義でリリースした “Drum N’ Bass For Papa” は、Aphex Twin や Squarepusher などといったエレクトロニカ / IDM 系アーティストによるドラムンベース導入の先駆けと言えるだろう。どこか飄々としていて捉えどころのない Luke の気質もあって、どちらのアルバムも後続のアーティストたちほど派手な注目は浴びなかったものの、90年代における Luke の嗅覚の鋭さは、いくら称賛してもし切れないほどである。

 

そして、そんな時代を先駆けた “Drum N’ Bass For Papa” から約15年ぶりに、Plug 名義でのフル・アルバムがリリースされる。95年から98年にかけての秘蔵音源をまとめた作品ということで、アートワークは “~ Papa” の別ヴァージョンのようなものであり、タイトルも “Back On Time”。これを機に、Luke に当時の貴重なエピソードの数々を披露してもらった。

 

 

 

 

 

interview : Yoshiharu Kobayashi

――プレス・リリースには、偶然発見したDATテープを Ninja Tune に持っていて、この “Back On Time” がリリースされることになったと書いてありますが……。

 

Luke Vibert : いや、実はこのアルバムの曲は無くしてしまっていたわけじゃないんだよ。前から Plug 名義での未発表曲は60曲くらいあって、その中から選んだものなんだ。今年の夏に Ninja Tune に行って話していたら、彼らの方から「Plug 名義で何か出せないの?」って訊かれたんで、これを出すことになってさ。まあ、きっと Ninja Tune としては面白可笑しくするために、「これは偶然発見された DAT テープの音源で……」みたいに書いたんだろうね(笑)。

 

 

 

――そうだったんですね。でも、今回リリースするトラックが10年以上前に作ったものであることは事実ですよね。今改めて聴き返してみると、当時の楽曲はどのように感じますか?

 

Luke Vibert : この頃のサウンドは自分でも大好きなんだ。だから最近も Plug 名義の音を再現しようとしているんだけど、僕のスタイルが変わってきたからか、機材が変わってしまったからか、すごく難しくて。今僕がジャングルとかドラムンベースを作ろうとすると、Amen Andrews っていう別名義に適したクレイジーなサウンドになってしまうんだよね。Plug の洗練されたジャジーな音はなぜか上手く再現できない。もしかしたら、僕の頭のどこかが壊れてしまったのかもしれないな(笑)。そういうこともあって、Plug 名義の作品をこういった形でリリース出来るのはとても嬉しかったりするんだ。

 

 

 

――あなたが Plug 名義でドラムンベースを作っていた90年代中盤は、イギリスでドラムンベースが盛り上がっていた時期だと思いますが、そもそもあなたはどのようにドラムンベースと出会ったのでしょうか?

 

Luke Vibert : 94年か96年くらいに、僕は出身地のコーンウォールからロンドンに引っ越したんだ。それがラッキーだったんだろうね。ロンドンに引っ越していなかったら、たぶんドラムンベースのことなんて知らなかったと思う。コーンウォールではブレイクビーツとかファンキーなサウンドを作っていて、その後にデトロイト・テクノに影響を受けたものとかも作り始めていたんだけど、ドラムンベースはロンドンに行くまでは知らなかったからね。ロンドンの海賊ラジオでドラムンベースがかかっているのを聴いたりして、「なんだ、これは?!」ってなって、自分でも作ろうと思うようになったんだよ。

 

 

 

――具体的に、ドラムンベースのどのようなところに魅力を感じたんですか? ドラムンベースは、あなたがやっていたブレイクビーツの発展形として捉えることも出来ますけど。どちらもすごくファンキーな音楽ですし。

 

Luke Vibert : うん、ジャングルのファンキーな部分は最初からすごく好きだったね。僕がそんな自分の嗅覚を信じてジャングルを作ったのは良かったなと今でも思うよ。っていうのは、ジャングルを作り始めた当時、Aphex Twin や μ-ziq みたいな僕の友達は、「ジャングルなんて幼稚だ」って馬鹿にしていたんだ。レイヴ・ミュージックみたいだし、子供っぽい音楽だってね。けど僕は、ジャングルのファンキーな部分が好きだったから作り続けていて。98年くらいになると、ジャングルもだいぶ定着してきたから、Aphex Twin とかも「ジャングルっていいよね」って言い始めたけど(笑)。

 

 

 

――なるほど(笑)。

 

Luke Vibert : まあ、僕がジャングルを作り始めたときは、自分ではちゃんと作っているつもりだったんだけど、当時の一般的なものとは違うユニークなものになってしまったんだよね。だから、Rising High (“Drum N’ Bass for Papa” をリリースしたレーベル)に音源を持っていったときも絶賛されたし、Squarepusher からも「すごく面白い音楽を作るね」って言われたんだ。僕は普通に作っていただけなんだけど、たぶん僕がちゃんとジャングルを理解していなかったおかげで、一風変わった面白い音楽になったんだろうね。とてもラッキーだったよ。

 

 

 

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“Drum N' Bass For Papa” (Rising High)

 

 

 

――現在では、Plug の作品が Aphex Twin や Squarepusher のドラムンベースやドリルンベース導入に影響を与えたと言われているわけですが、実際に彼らと近しい間柄であるあなたから見て、そのような位置づけは正しいと感じますか?

 

Luke Vibert : たぶんね。今振り返ってみると、実際に彼らに影響を与えた部分はあるかもしれない。けど、いずれにしても彼らもドラムンベースは取り入れていたと思うよ。もし僕が Plug をやっていなくても、Squarepusher も2、3ヶ月後にはドラムンベースを取り入れた作品を出していたしね。確かに僕の方が少し先だったけど、そこまで大きな時間の差ではなかったんだ。

 

あの当時は……Aphex Twin や Squarepusher、それに僕が作っていたドラムンベースって、クラブ仕様じゃなくて家で聴くサウンドなんだよね。実際に自宅でベースを弾いたりパーカッションを入れたりして、ああいう速くてクレイジーなサウンドを作ることに夢中になっていたんだ。そういった流れが当時生まれていたということだよね。あともう一人、Autechre の Rob も Plug のアルバムに影響を受けたって言ってくれているんだ。僕はそこまで大したことはしていないと思うんだけど、以前彼と会ったとき、「Plug のアルバムはすっごく重要な作品だ!」って彼が言ってきたから、「いや、そんなことないよ」って僕が言うと、「すっごく重要だよ!」ってまた言ってくる始末でさ(笑)。

 

 

 

――(笑)。今話してくれたように、Aphex Twin や Squarepusher、そしてあなたが作るドラムンベースは、非フロア仕様という点でも新しかったと思いますが、そういった要素は意識的に導入していたのですか?

 

Luke Vibert : その質問はよく訊かれることがあって、「その通りだ」って答えちゃうこともあるんだけど(笑)。でも実際は、フロア仕様のドラムンベースが作れなかった、っていうのが正直なところなんだ。フロア向けのサウンドはシンプルじゃなくちゃいけないんだけど、僕が作るとどうしても複雑な感じの音になってしまうからね。

 

 

 

――なるほど。そう言えば、“Drum N’ Bass for Papa” と 今回の “Back On Time” は、どちらもあなたのお爺さんの写真をアートワークに使っていますよね。これはどうしてなんですか?

 

Luke Vibert : アートワークよりも先に “Drum N’ Bass for Papa” っていうタイトルが決まっていたんだよね。でも僕の父親の写真は比較的に新しくてカラーだったから、もう少し味のあるものを使いたいと思っていて、祖父の写真を使うことにしたんだよ。祖父はコーンウォールでは有名なマジシャンだったらしくてね。実家にポスターがあったから、「これを使おう」っていうことになって。この写真の通り、祖父は東洋の格好をして、オリエンタルな手品をやっていたんだ。みんな結構、この写真の人物は僕なんじゃないかって言うんだけどね(笑)。「この写真のために、素敵な衣装を着て写真を撮ったのかい?」ってよく訊かれるから、「ノー、ノー、これは僕じゃないよ」っていつも答えてる(笑)。

 

 

 

――アートワークよりも先にタイトルが決まっていたとのことですが、このタイトルの由来は?

 

Luke Vibert : 僕の父のためにミックステープを作ったことがあったんだよね。“Drum N’ Bass for Papa” っていうタイトルで。それを Plug のアルバムを作るときに思い出してピッタリだと思ったんだ。なぜかと言うと、Plug のドラムンベースは、若い子向けというよりは大人びた感じがあるからね。大人向けのドラムンベースっていう意味も込めて、“Drum N’ Bass for Papa” って付けたんだよ。

 

 

 

――最近はベース・ミュージックの流行に伴って、ドラムンベースやジャングルが復活している傾向にありますよね。そういった流れについては、どのように感じていますか?

 

Luke Vibert : 僕は、いつも流行の音楽をチェックしているタイプってわけじゃないから、意見できるような立場ではないと思うけど……でもドラムンベースがまた盛り上がっていることは嬉しいよ。最近のドラムンベースはいいものもあれば悪いものもあって、ちゃんとしたドラムンベースは少ないと思う。だから、もっとジャジーなドラムンベースとかが出て来てくれると個人的には嬉しいかな。

 

 

 

――わかりました。では、最初の方で Plug 名義でのサウンドは今では作れないと言っていましたが、次にあなたが新作を出すときは、どの名義での作品になると思いますか?

 

Luke Vibert : そうだなあ……作る音楽やレーベルにも拠るね。ドラムンベースを作るんだったら Amen Andrews を使うだろうし、Planet Mu から出すなら Luke Vibert だし、Ninja Tune や Warp だったら Wagon Christ かな。僕は好きな名義を好きなように選べるんだよ。でも、十分にたくさんのアーティスト名を持っているから、これ以上何か名義を増やすつもりはないかな(笑)。

 

 

 

 

 

end of interview

 

 

 

 

 

リリース情報

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Plug - “Back On Time” (2011)
品番 : BRC-314
レーベル : Ninja Tune / Beat Records
税込価格 : Y1980(税込)

購入はこちらから→beatkart 

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