世界各地での精力的なライブ・パフォーマンス、commmons や op.disc といった国内レーベル群・そして Carlsten Nikolai のraster noton からのリリースに並行して、近年では写真家としても目覚ましい活躍を見せる AOKI takamasa。北米5都市を巡るツアーを終え、ベルリンに戻ってきたばかりの彼をキャッチし、大学時代からの親友でもある筆者とのメール・インタビューに応じてくれました。リラックスして屈託のない、普段の彼らしいムードが伝わってきます。
Interview : kohei terazono
——昨日(5/17)、北米ツアーからベルリンに帰ってきたばかりだよね。
北米の複数の都市をツアーするのは孝允にとってはじめてだったと思うんだけど、その印象はどうだった?
AOKI : カナダとアメリカの文化的な違いとか、(もちろん色んなタイプの人がいるけれども)国民性の違いが面白かったなー。
でも今回僕にチャンスをくれたオーガナイザの皆とか、LIVEに来てくれたオーディエンスには共通点が多くて、みんな文化の違いを受け入れようとする意識の人や、新しい音とか今までにない体験を求めるような、open mind な人たちが多かったように思ったな。
あと、光が今までに見た事無いぐらいクリアでシャープやったなー。
今日これから写真が現像から上がって来るんやけど、凄く楽しみ。
——ツアーしたのはどの都市?
AOKI : モントリオールから始まって、トロント、ボストン、NY、そしてフィラデルフィアの順かな。
——フィラデルフィアも行ったんだ!The Roots のホームタウンだね。
AOKI : そう!
フィラデルフィアのLIVEがツアーの中で一番良かったよ!!
オーディエンスも会場もオーガナイザも他の出演アーティストも地元のおじさんDJもエンジニアも全て最高で、物凄いシナジーがあったと思う。ホンマに楽しかったし、最高にいい雰囲気やったよ。

——アメリカでのいわゆるエレクトロニック・ミュージックのポジションは独特だよね。
決してメインストリームには乗らない代わりに、ずっと生き続けているというか。
AOKI : うん。やっぱりアメリカに住んでる人の大多数は、視覚的に分かりやすいエンターテイメントを求めていると思ったな。
僕達の音楽は、視覚的な情報っていうよりも、やっぱり目に見えない何かを感じ取って、体感して楽しむ傾向にあると思う。
だからそういう音楽に反応してくれる人たちは、みんなテレビやメディアなどの洗脳からある程度脱している人たちとか、もしくはこれからその状態に向かうであろう人たちだったように感じたね。
地球や生命を食い尽くす時代遅れの資本主義システムから、少し距離を置いてる人たちが、僕達の音に反応してくれるように思った。
もうメインストリーム(巨大資本によって作られた流れ)っていう言葉も使われなくなる時代に入ったように感じるな。
——そう、もはやメインストリームとその他のマイノリティもしくはオルタナティヴという枠組み自体が形骸化しつつあるかも知れないよね。
AOKI : うん。『テロ』 とか、『戦争』 とか、『貧困』 とかみたいに
”資本主義時代に使われていた言葉” として博物館入りは決定やと思う。
——個人がそれぞれ選びとるべきものを自分の意志で選択できる世界になるといいね。
AOKI: それしかないよね!

——その一方で、反動的に逆行するキャピタリズム(全体主義)的な動きも依然としてあるけど、孝允自身はそれについてはどう思う?
AOKI : 僕は人間の活動も自然の流れの一部やと思うので、水が全てを溶かし崩して自然な方向に流れるように、全ての人類の活動も、色んなアホな事とかヒドい事を経験しながら、自然な美しい流れに帰結していくと思うな。
今の時代は、ネットのおかげで過去のひどい謀略や策略の真実を知ってそれを踏まえて現代を見る事ができるようになったこともあって、現代に未だ存在する旧石器時代から18世紀並みの時代遅れの方法がこれでもかというぐらいハッキリ見えるようになってきた。
だから、そういうキャピタリズム(博物館入り決定)という時代遅れのスタイルは、自ずと消えていくようになると思う。
だって全然楽しくないし、心地よく無いし、誰が一番とか、誰が最初とか、確かに凄いし尊敬するけど、宇宙的な視点でみるとそれ程大手を振って主張する程の事でもないと思うな。
——ところで、NYでライブした The Bunker っていうヴェニューのwebを見たら、孝允の紹介のところに『我々はつい最近まで彼の音楽を知らなかったが、raster noton からリリースされた彼の12インチ(RN Rhythm Variation)を聴いて衝撃を受けた』って書いてあった。そういういままで届いていなかったリスナーにも孝允の音が届けられたと言う意味で、raster noton からのリリースはひとつのターニングポイントになったと思う?
AOKI : うん。確実にそうだと思う。本当に心から感謝してる。
僕は今まで日本のレーベルを world wide にするのを目標にずっと活動してきたやん?
ヨーロッパである程度時間を過ごして分かったのが、世界中の多くのレーベルにとって、日本が最大のマーケットであるという事。
だから一度日本のレーベルでリリースすると、海外のレーベルにとってはその作品はもうビジネスチャンスが無い作品という事になるねんな。
日本でしか売れないから、日本で出たものをヨーロッパで出しても、ビジネス的には意味がない。
だから、僕のソロ作品は、一部の良心的な海外のディストリビュータが流してくれた作品と、現地でのLIVEとネットでコピーされて外に流れる以外は、ほとんど出回ってなかったもんね。
そんな状況でも日本のレーベルやディストリビュータの方々や友人、世界中のイベントのオーガナイザとか、音楽マニアの人たちはずっとサポートしてくれてたから、そういう人たちにも本当に心から感謝してる。
あと日本は世界最大のマーケットやからこそ、その反面日本から発信して海外に音楽をディストリビュートするのも難しいところがいまだにあるやん。
だから日本のインディーレーベルはハードな状況で本当に頑張っていると思う。
今まで自分をサポートしてくださった全ての日本のレーベルにも感謝したい。

——イギリスの F1 Racing ってモータースポーツ誌に op.disc からのアルバム("Parabolica")がひょっこり紹介されてたなんてこともあったね。
AOKI : そうそう!ゾノが見つけて教えてくれたもんな!ありがとうな!
あの時めっちゃめちゃ盛り上がったわ。ホンマに嬉しかった。
届いて欲しい所に届いた!って感じしたわ。
——あれ、向こうのエディターの人が孝允の音楽を好きで、プロモーションとか抜きにして勝手に載せてくれたんだよね。
AOKI : 最高やったわ。正に ”命中” って感じしたもん(笑)。
——タカマサの活動って、そういう自然な音楽の力のひろがりと共に大きくなってるよね。
これって実はすごいことなんじゃないかなって思うよ。
AOKI : ありがとう、それはほんまにみんなのおかげやわ。
2001年に音楽をリリースさせてもらうまで全然知らんかってんけど、日本の音楽雑誌などで自分の情報を掲載してもらうにはお金を払わないといけない状況が多いって知って、すげーショックやってんな。
それで、そういうことにお金使うんやったら、機材とか、実際の活動に投資して、あとはblogとかLIVEとか、直接オーディエンスと繋がる部分に全力で取り組もうって思ってん。情報じゃなくて、体感とか経験を大事にしたかってん。
それが良かったんかな。

——ついこないだのバルセロナでのライブでの話も面白かったね。
みんな最初は座って聴いてたんだけど、ライブ中に 「立ってくれ!」 ってジェスチャーしたら最終的にはみんな立ち上がって踊ってくれたっていう(笑)。
AOKI : バルセロナは、僕の前にプレイした兄ちゃんがアンビエントな感じやって、それでオーディエンスが皆座ってもうててん。
僕はノリノリでいこうと思ってたんやけど、皆座ってたから、最初ユルめで初めて、最後はみんなノリノリやったで(笑)。
あと同じような状況で面白かったのはイタリアのモデナ。あの時爆笑やったで。
現代美術館の展示室の一室で、作品が展示されてる最中やったから、壁にごっついセキュリティの兄ちゃんがいっぱい立ってて、それに囲まれるようにして250〜300人ぐらいのオーディエンスが座っててんな。原則着席のまま聴かなあかんかったらしいけど、一人、二人と立ち始めて、最初はセキュリティーがいちいち注意して座らせとったんやけど、途中から全員立って踊りはじめてもうて、もうセキュリティの兄ちゃんも諦めとったわ(笑)。
個人的にはモデナって名前聞いただけでちょっと盛り上がってたから、あの時めっちゃ気合い入れたわ(笑)。
——おそらく、それも音楽そのものにパワーがなければ有り得ないことだよね。
AOKI : そうやったら嬉しいな。僕はただ遊んでただけやからよう分からんけど、ゾノからそう言うてもらえると、なんかそうなんかなと思うわ。
——孝允自身のアーティストとしてのキャリアももうじき10年目を迎えようとしているところだけど、もう10年も経ったって感じ?それともまだたったの10年って感じかな?まだまだやらなきゃいけないことは沢山あると感じている?
AOKI : もうすでに10年経ったんかーって感じやなー。ちょっと信じられへんわ。そういう意味ではたったの10年!?って感じもあるな。
僕の感覚としては、未だにあの大学時代にゾノとか高木(正勝)君とかリョウ君(黒川良一)とかオグルス君とかと遊んでだ時と全然気分は変わってなくて、ずっと遊んでるって感じやな。そのまま遊びのエリアがかなり広なったって感じかな。
やらなあかん、って思ってる事はあんまり無いかなー。
でも音楽的な事に関しては、まだまだまだまだまだ精進した方がもっと面白くなるやろなーと思うな。
もっと地球上の色んな所に行ってその場を体験したいな。
死ぬまでには宇宙に行きたいし、それぐらいさしてもらえるようになるまではまだまだ精進した方がええなと思うな。
——つい昨日(5/17)、リョウ君 als electronica で gold prize 獲ったよね。あれは嬉しかったな。
AOKI : かなり盛り上がったわ!
リョウ君あんまりメイルで 『!』 マーク使えへん人やけど、流石に今回のメイルでは 『!』 ついてたで(笑)。
嬉しかったわ。
——やっぱり孝允の音楽とキャリアは自然に拡張していってるんだよね。
いつもめちゃめちゃ努力もするし毎回ライブでも真剣勝負で挑むけど、その反面つねにリラックスしていて、決して不自然なアティテュードにはならない。
これは孝允自身がもともと持ち合わせていた性格だとも思うんだけど、この10年のキャリアのなかでいろんな人たちに出会って、世界のいろんな場所に斬り込んでいって、その結果さらに磨き上げられたものでもあるんじゃないかな。
AOKI : ありがとう。努力というか、僕としては集中して遊んでるだけやねんけど、そうかもしれへん。
毎回色んな場所で刺激的な人たちや状況に会う事ができて、そこから得られるエネルギーや刺激をそのまま音とか写真につぎ込んで、そうしたらまたその音や写真が次の刺激的な人たちや状況をもたらしてくれるって感じが正確かもしれない。ラッキーやわ。
世界中で色んな人たちに会って思うんやけど、人間の意識が今までにないぐらい凄い勢いで拡張してるわ。
『メインストリーム』 っていう実体のないものを作り出して、大多数の意識を一つの方向に向ける事で利益を得ている人たちがいるけれども、そういう18世紀並みのコントロール方法はもう全く意味をなさない時代に入ってきてると思う。
コントロールっていう概念も古くなって来てるようにも思うな。全部伸び放題でええと思うわ。
キチ!っとコントロールされた雑草一本生えてない場所よりも、街中が雑草だらけの方が落ち着くねんな。
『ええ(良い)加減』 ぐらいがホンマにちょうどええと思うわ。
——うん、このまま自然な良い連鎖がつながっていけば、もっと楽しくなるね。
AOKI : それを皆とシェアしたい、っていうのが目標やね。

——写真と言えば、こんど孝允の photo-zine(写真集)がリリースされるらしいけど、その話も聞かせてもらえるかな?
AOKI : 東京の G/P Gallery がリリースしてる photo-zine シリーズの一つとしてリリースしてもらえる事になってん。
また一つ夢叶った。ラッキーやわ。関係者の皆さん全員に感謝したいです。
あと5月28〜30日にTWS本郷で行なわれるトーキョーポートフォリオレビューのイベントの一環として、「NEW / ANOTHER FASHION OF PHOTOGRAPHY」 (キュレーション/後藤繁雄、深井佐和子)っていうグループ展に参加させてもらう事になってんな。これまたラッキーやで、ほんまに。
http://www.tokyoportfolioreview.org/
あと、その後に6/2 - 6/4に開催される TOKYO LIFESTYLE PHOTO っていうのにも参加させてもらう事になったみたい。
今さっきメイルもらったわ。やったー。嬉しい。
http://www.tokyolifestylephoto.com/
——おお、ますます楽しみだね!
まだベルリンに帰ってきたばかりでようやく一息つけた感じだと思うけど、また近々日本でライブしたりする予定はある?
AOKI : 多分11月に raster noton の日本ツアーに参加させてもらえる事になると思う。
この前カールステン(・ニコライ)が言うてたわ。
——そうか、じゃあまた11月に強力な音を持って帰ってきてくれることを期待してるよ!
AOKI : あはは。あんまり期待せんとってや(笑)。
最近かなり 『ええ(良い)加減』 やからなー(笑)。
ええのできますように!
——うん。今まで通りリラックスして取り組んでおくれ。ベルリンはどう?ちょうどこれから過ごしやすい季節になるんじゃない?自転車で街を走ったりするのにちょうどよさそうだけど。
AOKI : でも5月になってもめっちゃ寒いねん。。
すげー曇りばっかりやし、寒いし。今もヒーターonにして、セーター着てるわ。
自転車なー、ええやろなー・・・。この前ハンドルとサドルだけ盗まれてな・・・。まだ修理してないねん。
去年の夏は自転車を電車に持ち込んで(ヨーロッパはこれができるから最高)、郊外の湖に泳ぎに行ってね。
駅から湖までの道のりが自転車に最高やったわ。
End of interview
[Event Information]
NEW / ANOTHER FASHION OF PHOTOGRAPHY
参加アーティスト : AOKI takamasa/石井文得/小浪次郎/長浜徹/細倉真弓
場所 : トーキョーワンダーサイト本郷(TOKYO PORTFOLIO REVIEW Vol.4内)
日程 : 2010年5月28・29・30日(FRI-SUN) 11:00 - 19:00
入場無料
http://gptokyo.jp