ロンドン南部、ボクスホールで開催されているパーティ、Horse Meat Disco。小さなゲイクラブから発せられる音楽、そして情熱が、nu disco/disco dubブームの波に乗り、ムーブメントを巻き起こしている。James Hillard、Jim Stanton、Severino、Luke Howardの4人によって毎週日曜日、7年間に渡って積み重ねられた地道な活動は、レーベル、リエディット、コンピレーションアルバムなど、パーティの枠を超え、世界中を席巻している。
本インタビューでは、待望の初来日を果たし、フジロックフェスティバルへの出演を終えたばかりのJamesとJimに、パーティにかける思いや、今日までの経緯、今後の展望を語ってもらった。
「ゲイパーティ」と「ディスコ」というHorse Meat Discoを構成する2つの要素について、冷静に、かつ主体的に発せられた言葉の数々は、彼らの音楽に、そしてパーティに対する思考の深さと覚悟の強さの表れである。
Interview : Hidehiko Takano
――まず、今回のフジロックへの出演で初来日となった訳ですが、日本の印象・感想をお聞かせください。あいにく、会場の天候が良くなかったようですが…。
James : フジロックは美しかったね。僕らが出演してきた他のフェスティバルと比べて洗練されていて、とても日本的、東京的だったよ。美しい環境の中で素晴らしい公演ができて、とてもよい時間を過ごせたね。お客さんの反応もすばらしかったし。
Jim : 地球上で最も洗練されたフェスティバルだと思ったね。例えばトイレなんか、3日目になってもトイレットペーパーがあるんだ。他のフェスティバルではそんなことはとても考えられないよ。しかも、清潔なままなんだよ。喫煙スペースがあったのも素晴らしいね。日本の文化は洗練されているって思っていたから、とんでもない驚きという訳ではなかったけど、とても進歩的だって感じたよ。天気は全然問題なかったよ。僕らがいるロンドンは雨が多いからね。
James : 僕らがこれまでに出演してきたフェスティバルでは、みんな、そこらへんに転がり込んでたり、騒ぎ回っていたりして、混沌としているんだ。フジロックでは椅子に座っていたり、きちんと並んでいたりしていたんだ。
――滞在中、何か特別なことはされましたか?
James : 苗場には一晩だけ滞在して、後は東京にいたんだけど、色々なことをしたよ。地下鉄にのって、あちこち見て回ったんだ。Jimのボーイフレンドが東京マニアで色々と知っていたからあれこれ教えてくれたし、僕のボーイフレンドの友達が東京に住んでいたりもするから、たくさん連れ回してくれたよ。僕は日本語が一切読めないから、周りの人の助けがなかったらもの凄いカルチャーショックで大変なことになっていたと思うな。
Jim : (滞在ホテル最寄りの)新宿駅なんて、とんでもないよ。まさしくrat race(ネズミのレース)だね。
James : ラッシュアワーとかに、駅が混沌としている時に使う表現なんだ。新宿駅にはびっくりしたよ。
Jim : ロンドンで一番混雑するのはウォータールー駅だと思うけど、利用者数は大体一日5万人くらいじゃないかな。新宿は400万人近いんだって?想像を超えるスケールだよ。
James : それだけ巨大な街なのに、何もかもがしっかりと機能しているのも凄いよね。とてもよく設計されている。電車は時間通りに動くし、中はとても涼しいし。

――それでは、本題に移らせていただきます。Horse Meat Discoについて、現状、日本語で得られる情報はとても少ないので、まずは基本的なことから伺います。
Horse Meat Discoはパーティ名であるだけでなく、レーベル名、あるいはユニット名でもある訳ですが、それぞれの関係性についてお教えください。
James : 何枚かの作品をリリースしてきてはいるけど、基本的にはパーティの名前なんだ。
Jim : 3枚のアナログとコンピレーションを2作リリースして来ているよ。
James : 自分達のレーベルとして、ちょこっとリエディット作品をリリースしたし、コンピレーションをStrutというレーベルからリリースしているけど、基本的にはパーティの名称と思ってもらっていいよ。
――それは、パーティとしてのHorse Meat Discoの活動に最も注力されている、という解釈でいいのでしょうか?
James : その通り。ロンドン、ボクスホールにあるEagleというクラブで週に一度、日曜日に必ず行っていることだからね。10月に7周年を迎えるところなんだ。
――では、Strutからリリースされた2枚のコンピレーション、Horse Meat DiscoⅠ/Ⅱはどのような経緯でリリースされたのでしょうか?
James : 僕が学生時代にStrutで働いていたから(創設者の)Quintonのことは元々良く知っていたんだ。学校を卒業してからも色々なレーベルで働いていたから、パーティ名義でコンピレーションをリリースしたいと思っていくつかのレーベルとミーティングをしたけど、適切なレーベルが見つからなかったんだ。そんな時にQuintonと再会して、話を持ちかけたところ、よし、やろうってなったんだ。
――日本のシーンから見ると、パーティ単位で、その名を知られ、コンピレーションをリリースし、国際的にツアーをしてフェスティバルに出演するにいたる一連のキャリアの積み方がとてもユニークなのですが、どのようにして実現したのでしょうか?
Jim : 一番の要因は、今までに僕らのパーティに招いてきたゲストなんじゃないかな。7年間で素晴らしいDJを何人も招いてきたことで、discoをプレイするDJたちが行き交うターミナル駅みたいなパーティになっているんだ。土曜日ではなく、日曜日の夜に行われるパーティという意味では、未だにロンドンではユニークな存在だし、ゲイパーティだし、特別なヴァイヴがあるから、みんながプレイしてみたいって思うパーティなんだよ。そうやって色々なDJ、あるいはそのマネジメントと関係を築いて行ったことで、現在のHorse Meat Discoがあるんだ。
James : ロンドンのゲイクラブは大抵の場合、ゲストDJを招かないんだ。どのゲイパーティでもプレイしているようなお決まりのDJがプレイするだけなんだよ。そんな中で、僕らのパーティはゲストを招いてきたから、多くの人たちにとって、特別な場所になっていったんじゃないかな。その動きが、discoリバイバルみたいな流れと合わさることで、それこそフジロックに出演出来るまでに至ったんじゃないかな。僕らはプロデューサーじゃなくて、作品をたくさんリリースしてきた訳でもないから、とてもラッキーだと思うよ。作品の評価ではなくて、パーティの考え方とか目指してきた方向性を評価してもらえているという意味で素晴らしいことなんだ。
――4人のメンバーそれぞれに特定の役割分担などはありますか?
James : 元々、僕とJimがパーティを初めて、ゲストをブッキングしていたんだ。LukeとSeverinoがレジデントDJで、当初僕らはDJをしていなかったんだ。僕らにとって2人は音楽の先生みたいな存在だね。二人は僕らに常に新しい音楽をもたらしてくれるんだ。
――元々パーティをプロデュースする立場だった2人が、現在は毎週DJをされているのですか?
Jim : 毎週ではないね。毎回のパーティでは僕ら四人の内、最低二人がDJしているんだ。大抵、誰かしらがどこかにツアーで回っているからね。
――では毎週二名のレジデントと、ゲストDJという構成ですか?
James : ゲストDJのブッキングは毎週ではないね。ドラッグクイーンのショーがあったり、他にも色々あるからね。毎週のようにゲストDJが登場して、ドラッグを摂取して、遊んで、みたいなのはいやだしね。
Jim : 元々はゲイパーティだったけど、今は偏ったものではくて、色々な人が来て、それこそ女の子とかも参加して、溶け込んでいるんだ。
James : 良いパーティに不可欠な要素は「融和」なんだと思うんだよね。異なる世界にいる人たち同士が結び付き、混ざり合うんだ。

――BBCが特集したHorse Meat Discoの映像をネット上で拝見しましたが、いわゆるゲイパーティとは異なる印象を受けました。もっと、多くの人が参加し、楽しんでいる様子でした。
Jim : 会場はゲイクラブだし、多くのゲイが参加しているので、ゲイパーティであることは確かだよ。ただ、ゲイが中心になってはいるけれど、ストレートの人たちや女性にも開かれているんだ。それこそ僕らが遊びに行って、育ってきたパーティがゲイパーティじゃなくて、オープンなものだったからね。パーティに一歩足を踏み入れた瞬間に、歓迎されているな、って感じらることが大事なんだと思うんだけど、僕らのパーティにはそういう要素があるから、ストレートの人たちが遊びにきて楽しめるんじゃないかな。
――では、ゲイ・ディスコ・パーティとして定義されることに対して抵抗はありますか?
James : 全く気にしないよ。実際に土台はゲイパーティな訳だし、ゲイカルチャー自体が以前よりも社会に広く受け入れられるようになってきたと思うんだ。ストレートの人がゲイクラブに来ても楽しめるようになったし、ゲイの友達が何人もいたりするからね。UKではゲイクラブとストレートクラブの間にあった隔たりが縮まって来ているんじゃないかな。それこそゲイの人以上にゲイみたいなストレートの人をたくさん見かけるしね。
Jim : Horse Meat Discoはいわゆるゲイパーティからほんの少し考え方を広げただけのことだと思うんだ。ストレートの人たちが行くパーティでは当たり前のことだった「音楽を聞きに行くためのパーティ」ということをゲイパーティで実現しただけのことなんだ。パーティにおける優先順位を変えただけで、決して別の新しい何か、ではないんだと思う。
――では、近年のnu disco / disco dubシーンの台頭をどのように思いますか?いわゆるブーム以前からパーティを開催してきたのだと思いますが。
James : ブーム以前から、というより、流れの中の一つ、という感じだね。今日のシーンの広がりは素晴らしいことだと思うよ。tribal houseとかtranceだけでなくnu discoとかdisco dubも色々な所で耳にできるようになったのは嬉しいことだね。
Jim : 何かのブームの中にいるというのは素晴らしいことだよ。Lindstromがアメリカで評価されて、凄く成功しているけど、素晴らしいことだよ。成功によっておかしくなってしまったことなんてないし、ただ、変わることなく素晴らしい音楽を生み出しているだけだからね。彼はシーンの中で、色々な人と一生懸命に音楽を続けてきたんだ。それこそIdjut boysとかHarveyとかもね。彼らが、十分なお金を手にすることが出来たのは素晴らしいことだよ。
James : discoブームは遠く離れたところからやってきた訳ではないと思ってるよ。70年代に登場して以降、ずっと存在していた音楽で、それこそ僕の父親は80年代にプレイしていたし、だから僕はDJになったんだしね。90年代中盤にロンドンに移住した当初もクラブでdiscoがかかっていたよ。常にそこにあるものだったんだ。最近は、minimal technoみたいな退屈な音楽に世の中が偏り過ぎてしまったから、そんな時に、音楽のルーツとしてのdiscoにみんなが立ち返ってきたんじゃないかな。個人的な意見だけど、ダンスミュージックがシリアスになり過ぎてしまったんだと思う。ナイトクラブに何のために行くのか、目的を見失っていたんじゃないかな。そもそも、何かからの逃避行動だったんだよ。日常から逃れ、楽しむことだったんだ。
ゲイの人たちには教会が無いし、行かない。だから、ディスコみたいに仲間と集えるところが心地よかったんだ。disco musicはそういった背景を反映していたんじゃないかな。愛とか、想いとか、逃避や痛みでもあるんだ。
――では、今のブームが終わった後には何かが残ったり、何か変化が起きていたりすると思いますか?
James : なんとも分からないけど、幸運なことにロンドンのゲイクラブの流行サイクルは長いんだ。15年とか20年続いているクラブがある一方で、常に新しい人がシーンに入ってくるんだ。だから、今の流れが長く続くことを祈るよ。
Jim : disco musicはとても奥深いものだと思んだよ。今まで生み出されてきた作品はとても耐久性があるんだ。それにhouseシーンなんかはブームとか関係なく、常に、20年以上も存在し続けているよね。discoはそのhouseのルーツみたいなものだから、ブームで終わることなく残り続けるんじゃないかな。
――Horse Meat Discoの本拠地、サウスロンドン、ボクスホールという地域について日本ではあまり情報がありません。エリアの特徴についてお聞かせください。
James : ロンドンで最も古いゲイバーの一つがあるのがボクスホールなんだ。長い歴史がある街だよ。イーストロンドンと比べると、サウスロンドンは、あんまりみんなの話題に上がらないけどね。
Jim : それこそ1800年代から、公園に人々が集って、お酒を飲んだり、音楽を聴いたりしていたんだ。そういう色々な人が集うエリアなんだ。実際、僕らが出会ったのもサウスロンドンのブリクストンだったよ。Bassment Jaxxの人気に火がついたのも、dub stepのムーブメントの起点もサウスロンドンだよ。The ClashとかDavid Bowieもサウスロンドン出身だしね。
――色々なムーブメントが生まれる特別な土壌や雰囲気がサウスロンドンにはあるということでしょうか?
James : 常に新しい音楽やアートが生まれるシーンがあるんだ。イーストロンドンのようなトレンディーなものとは違うけどね。
アフリカとかジャマイカ、カリブ、ブラジルといった具合に、色々な人種が混ざっている地域だから、音楽的にもるつぼになっているんだ。それこそ、reggaeからdub stepが派生したんだと思うし。discoはafro、caribbean、latinの影響を受けたんじゃないかな。
――そういった雰囲気はさすがに Google Street View とかで見ても伝わりませんね。Horse Meat Disco の会場である Eagle 自体は発見出来ましたが。
Jim : ボクスホールはとても地味なところだから、実際に足を運んで、そのシーンの中に入ってみようと試みないと見えてこないんだ。ゲットーだよ。外から訪れた人が中に入って溶け込むには一歩踏み込んでみないといけない。ブティックとかカフェとかがあるようなエリアとは違うんだ。
――他のエリア、クラブにパーティを移そうと思ったことはありますか?
Jim : いくつもオファーはあったけど、移ることを考えたことは無いね。
James : とにかくEagleがパーフェクトなんだ。サイズも、バーも、素晴らしい裏庭もね。家みたいなんだ。名称が変わったりはしたものの、中身はずっと変わること無く素晴らしいよ。お店のメンバーとは家族みたいな関係だし、長年に渡って厚いサポートしてくれているんだ。

――では、パーティ以外、レーベルやユニットとしては今後どのような活動を予定されていますか?
James : 今まで通りリエディットは作ると思うけど、これからはオリジナルの制作に注力していくべきだと思ってるよ。DJにとってリエディットを創ることは素晴らしいけど、今はあまりにたくさんのリエディットが出回り過ぎてると思うからね。それに、僕はオリジナルが好きなんだ。
Jim : 僕ら四人でスタジオに入って制作してるけど。うまくいけば10月くらいには形になるかもしれないよ。
――リリースはHorse Meat Disco名義で?アナログで?
James : そうだね。是非そうしたい。indie rockなんかは、7inを買う人が多くて、今でもアナログが売れているようだからね。レコードを売ってお金を儲ける、というビジネススタイルからどう脱するか、という意味で音楽産業全体が岐路に立たされていと思うけど、そんな環境下でどこかのレーベルから出す、というよりも自分たちの手で創ってリリースする方が簡単だと思ってるんだ。どこかの大きなレーベルが、たくさんの準備金を用意してくれて、製作出来て、リリースさせてくれる、というのが出来たら嬉しいけど、実際には難しいよね。大変なことかもしれないけど、本当に良い作品をリリースすれば誰かが手に取ってくれると思っているし、幸い、僕らは多くの人たちからサポートしてもらえているんだ。
――では、今後のツアー予定を教えてください。
James : ここ2年くらいは毎週のようにあちこちツアーしているけど、ベルリンとリスボンでレジデントとしてプレイしているよ。あとは、アメリカの西海岸、東海岸、年末にはオーストラリア、そして日本にもまた来るよ。
――リリース予定はありますか?Horse Meat DiscoⅢとかは?ライセンシング等、色々難しい部分もあるとは思いますが。
James : disco musicの素晴らしい点の一つは、膨大な作品があることなんだ。そういった意味で、コンピレーションは色々作れるし、続編をリリースできたら嬉しいね。(ライセンシングについては)メジャーレーベルから、そうでないものまで色々あるから、そのバランスを調整して、予算内で収まるように曲をセレクトしているんだ。全てはStrutのおかげだね。
――最後に、サイト読者、日本のファンに向けたメッセージをお願いします。
James : 12月のelevenでのパーティに来てください!日本でのツアーを楽しみにしています。ボクスホールにも会いに来てください!
Jim : more shochu(焼酎)!
The end of the interview
[Release Information]
2010.06.23 (Wed)
>>"Horse Meat Disco 2"
|
99: Anchorsong Interview ![]()
2011.11.11
|
98: DJ AKi Interview ![]()
2011.11.10
|
97: Little Dragon Interview ![]()
2011.10.30
|
96: Justin Robertson Interview ![]()
2011.10.30
|
95: Justice Interview ![]()
2011.10.21
|
94: KIDO YOJI Interview ![]()
2011.10.21
|
93: Zomby Interview ![]()
2011.10.14
|
92: Joker Interview ![]()
2011.10.14
|
91: Rustie Interview ![]()
2011.10.07
|
90: Matthew Herbert Interview ![]()
2011.10.07