
Date: 2011. 11. 26 (Sat)
Location : Makuhari Messe
Text by Yoshiharu Kobayashi _ Photo by STRO!ROBO, Ryu Kasai, Yusaku Aoki, Hideyuki Uchino, Hikaru, Toshiya Nakamura

今や冬のダンス・ミュージック・フェスティバルの代名詞と言っても過言ではない WOMB ADVENTURE が、昨年11月に再び幕張メッセにて開催された。これまでは Richie Hawtin 率いる 〈Minus〉 クルーがメイン・フロアを任されてきたが、4回目の開催となる今回は、新たな挑戦とばかりにメイン・フロアの主役をバトンタッチ。なんと、Luciano 率いる 〈Cadenza〉 クルーがイビザの老舗クラブ Pacha にて繰り広げている超人気パーティー Vagabundosを、そのまま幕張メッセへと上陸させてしまったのである。WOMB という信頼のブランドによるプロデュースの下、ダンス・ミュージックの楽園=イビザのトップ・パーティーを日本にいながら体験出来てしまうという何とも贅沢なチャンス――ダンス・ミュージック好きであれば、これを逃す手はないだろう。
少しばかり早めの時間に入場した筆者は、とりあえず会場内を散策する。幕張メッセの屋内には、メイン・フロアの CADENZA / VAGABUNDOS AREA と、セカンド・フロアの WOMB WORLD WIDE AREA という2つの巨大ステージが隣接。そして、そこから屋外に抜けると、ゴージャスな雰囲気満点の “Red Energy” AREA が目の前に現れ、左右には休憩所やフード・エリア、各種アトラクションのスペースが広がっているという具合だ。今回から新設された若手 DJ 中心のサード・フロア Ooooze × RAFT TOKYO AREA は、それらのスペースの奥手にある。
まず場内をぐるりと一周して驚かされたのは、その居心地の良さだ。11月末という冷え込みが厳しくなり始めた時期ながらも、暖房設備が十分に完備された屋外エリアは、全くと言っていいほど寒さを感じさせない。また、バー・カウンターやトイレなどもたくさん用意されていて、大型フェスにありがちな大行列によるストレスを感じる機会もなかった。そのあたりのオーガナイズの素晴らしさは、イベント運営のプロフェッショナルであるWOMB ならではだろう。
さて、ここで改めて紹介しておくと、Vagabundos とはスペイン語で「放浪者」という意味。DJ として世界中を転々と旅して周る Luciano らが、自分たちのライフ・スタイルがまるで「放浪者」のようだと感じたことで、この名前が付けられた。Vagabundos のヴィジュアル・イメージは、どこかデカダンで中世ヨーロッパ的なものだが、それも「放浪者」というキーワードにインスパイアされたものというわけである。そして、そんな Vagabundos の雰囲気を盛り上げるべく、会場内にはアイシャドウをたっぷりと塗った Vagabundos 風のメイクアップしてもらえるスペースがあり、時間が経つにつれてフロアにも「放浪者」たちが溢れるようになっていったのが印象的だった。
もちろん CADENZA / VAGABUNDOS AREA のステージにも、Vagabundos らしい装飾が施されている。中世の白い建築物のようなオブジェが DJ ブースの両脇にそびえ立ち、Vagabundos のオフィシャル・イメージ写真にも登場していた「最後の晩餐」を思わせるテーブルも置かれているなど、非常に凝った造りだ。「Vagabundos がそのまま日本上陸」という謳い文句には、まさしく偽りがない。そして、そんなステージをフロア前列で感心しながら眺めていると、オープニング DJ の Survival Dance クルーや、デトロイト・テクノの重鎮であるスペシャル・ゲストの Carl Craig に続き、いよいよ 〈Cadenza〉 クルーの一員である Robert Dietz が DJ ブースの前に登場した。
〈Cadenza〉 のホープである Robert は、今年で二年連続となる WOMB ADVENTURE への出演。ドイツはフランクフルトに拠点を置き、Sven Vath らに多大な影響を受けてきたという彼だが、そのサウンドにはハウス・ミュージックのフィーリングが色濃く感じられる。この日は、直前の Carl Craig のセットがラストに向かって一気にヒート・アップしていったのを引き継ぎ、最初から勢い溢れるミニマル・ハウス / テクノで攻め立てた。
続いて登場した Reboot のライヴ・セットは初体験だったが、噂通りの素晴らしさだったと言っていい。切れ味鋭いシャープなサウンドに、テッキーかつファンキーなグルーヴ。Robert Dietz とはまた一味違ったストイックでダークなプレイが、耳を捉えて離さない。WOMB ADVENTURE’11 の開催直前に行ったインタヴューでは、「Reboot のライヴ・セットは、ここ最近見たテクノ系アーティストのライヴの中で最も良かった印象が強い」と DJ AKi 氏が語っていたが、この日の Reboot を観てその発言には大いに納得させられた。
そして最後はもちろん、〈Cadenza〉 のボスであり、ミニマル・シーンのスーパー・スターである Luciano の登場だ。終始体を左右に揺らし、陽気に踊るかのように DJ をしていた彼だが、この日のプレイは幕張メッセという大会場にふさわしい、パーティー感爆発の最高に楽しいもの。もちろん、彼の持ち味であるラテンの熱いグルーヴは奥底に感じさせながらも、的確に場の空気を読んだオープンで華やかなセットが繰り広げられる。いつの間にか巨大なフロアを埋め尽くしていたオーディエンスは、そんな Luciano のプレイに身を委ね、間違いなくこの夜で最高の盛り上がりへと突入していった。
先述の通り、今年はメイン・フロアの主役を 〈Minus〉 クルーから 〈Cadenza〉 クルーへとバトンタッチし、サード・フロアも新設するなど、4回目にして新たな挑戦が幾つも見られた WOMB ADVENTURE。一部のフェスで見られるように、そつなく「定番」の内容でいつまでも開催を続けるのではなく、新鮮な驚きや刺激を観客に提供しようと試みた今回は、蓋を開けてみれば大成功だったのではないだろうか。それは、会場に溢れていた満面の笑みの数々が何より雄弁に物語っていたと思う。これからも、最高のサウンドと環境、そして嬉しいサプライズを我々に届けてくれることを WOMB ADVENTURE には期待したい。
