”Special blog from L.A. for LOW END THEORY JAPAN” _ 2012.02.22
by Hashim Bharoocha
今回紹介するのは、3月の Low End Theory ジャパン・ツアーのゲスト・アーティストである Nosaj Thing とレジデント DJ の D-STYLES。
Jason Chung こと Nosaj Thing は、ロサンジェルス出身の韓国系アメリカ人。彼は幼少の頃から Snoop Dogg などの西海岸ヒップホップにハマり、ターンテーブリストを目指すようになった。

Nosaj Thing
「中学生になってから、スクラッチやターンテーブリズムにハマったんだ。当時はバトル DJ が流行ってたんだよ。ヒップホップを聴いていても、僕はラップよりも、ビートを主に聴いていたんだ。高校の頃の友達がレイヴ・カルチャーのことが詳しくて、彼が Reason と Fruity Loops のブート盤をくれたんだ。MIDI キーボードも持っていなかったから、古いウィンドウズのコンピューターにマウスでデータを打ち込んでたんだよ(笑)。当時はメインストリーム・ヒップホップが好きで、Dr. Dre、Neptunes、Timbaland みたいなビートを作りたかったんだ。でもその後は DJ Shadow とか Madlib など、インストのヒップホップも聴くようになった。ドラムンベースにハマった時期もあるし、Boards of Canada、Aphex Twin、Squarepusher など 〈Warp〉 のアーティストもずっと聴いてた。あと、LA のインディ・ロック・シーンにも影響されたね」。
他にも Radiohead や Cornelius の影響も公言している彼が初めてライヴを披露したのが、初期の Low End Theory だった。Low End Theory のレジデント DJ であり創始者でもある Daddy Kev はいち早く Nosaj Thing の才能に目を付け、彼のデビュー・アルバム 『Drift』 がリリースされる前から Low End Theory では Nosaj の “Coat Of Arms” や “1685/Bach” がヘビー・プレイされていた。この2曲は Low End Theory のアンセムにまでなり、今でもプレイされるとオーディエンスは興奮の渦に巻き込まれる。
Nosaj Thing のトラックの特徴は、ヒップホップ譲りの骨太のビート、Aphex Twin や Boards Of Canada から受け継がれたサウンド・デザインと哀愁感のあるシンセのメロディ、そしてダブステップに匹敵する強力なベースラインだ。デビュー・アルバム 『Drift』 に収録された “Coat Of Arms” では、Nosaj は自分の歌声をサンプリングし、破壊力のあるダウンテンポのビート、歪んだベースラインと巧みに組み合わせている。“1685/Bach” はタイトル通り、バッハの複雑なメロディ、フィールド・レコーディングで作られたパーカッション、変幻自在のシンセと組み合わせている。同アルバムの “Voices” は合唱団の歌声とアグレッシブなビートを組み合わせ、絶妙なバランスを生み出している。
『Drift』 は LA ビート・シーンのサウンドを定義づける上で欠かせない作品であり、Nosaj Thing は Flying Lotus と同様 LA を代表するアーティストになった。デビュー・アルバムの後にリリースされたデジタル・オンリーの 『Drift Remixed』 は、Low Limit、Dorian Concept、Teebs、Daedelus などが参加し、こちらも話題になった。
Nosaj Thing のもう一つの魅力は、彼の凄まじいライヴ。オタクっぽいルックスとは裏腹に、ラップトップ、Ableton Live, MPD コントローラーを激しく操り、自身のトラックをライヴ・リミックスしながら、エモーショナルなパフォーマンスを繰り広げる。通常ラップトップを使用したライヴは、アーティストがパソコンの画面を眺めているだけで退屈なことが多いが、Nosaj Thing はコントローラーをキーボードやギターのようにアグレッシブに演奏し、思わず引き込まれてしまう。
2011年の東北大震災後に行われた Low End Theory のチャリティ・イベントに出演した Nosaj Thing のライヴは、震災後のオーディエンスの複雑な感情を昇華するほど強烈なものだった。また最近のライヴでは、ミニマルでありながらもスリリングな CG によるビジュアルも取り入れており、世界中のフェスで引っ張りだこになっている。そんな彼の3月の日本でのライヴは、主に新曲をプレイすると語っていたので、絶対に見逃すわけにはいかない。
3月のジャパン・ツアーには 〈Brainfeeder〉 の Samiam、Daddy Kev、Nobody、MC Nocando、D-STYLES も出演するが、今回は D-STYLES を紹介しよう。1972年にフィリピンで生まれ、北カリフォルニア・サンノゼで育った D-STYLES は、ターンテーブリストの世界では神として崇められている。
90年代から Q-Bert や Mixmaster Mike らと伝説的スクラッチ DJ クルーである Inbisible Skratch Piklz の一員だった彼は、滑らかで“メロディアス”なスクラッチ・スタイルを確立。Jimi Hendrix の影響を公言していた彼は、ワウ・ペダルをスクラッチ・プレイに導入するなど、単にテクニックをひけらかすのではなく、音楽としてのスクラッチを追求。MC Jihad との Third Sight ではプロデューサー兼 DJ を務めていた彼のソロ・アルバム 『Phantasmagorea』 は、スクラッチ・ミュージックにおける金字塔となっている。3月の来日に合わせてリリースされる Low End Theory コンピレーションに収録された 『Phantasmagorea』 の “Clifford’s Mustache” は、スクラッチで作ったとは思えないストーリー性、グルーヴ感、音楽的深みに驚かされるはず。

D-STYLES
スクラッチ DJ としてのイメージが強い D-STYLES だが、Low End Theory でプレイするときは、ダブステップ、ヒップホップ、レア・グルーヴ、ロック、ワールド・ミュージックをスムースにミックスしながらも、そこにテクニカルなスクラッチを織り込んでいる。様々なジャンルをミックスしているにもかかわらず、違和感を覚えさせないスタイルと、他の DJ にはできないダブステップの2枚使いなどが見所だ。
また、LA の Low End Theory では、D-STYLES は数々のアーティストと忘れられないコラボレーション・セッションを披露している。4、5年前に 〈Anticon〉 の Jel がLow End Theoryに出演したとき、Jel と D-STYLES の即興セッションの絡み合いは今も記憶に刻み込まれている。先週の2月15日の Low End では、Gaslamp Killer がドラムを叩き、D-STYLES がスクラッチでコラボをするという予期できないパフォーマンスもあった。
前回の D-STYLES の来日で、彼は Slayer とダブステップをミックスする荒技を披露していたが、今回のジャパン・ツアー向けて新しいルーティーンを組んでくるようなので、要チェックだ!
ライター、DJ、プロデューサー。
東京出身。Pole 率いるベルリンのエレクトロニック・ミュージック・レーベル 〈~scape〉 から Cappablack 名義でアルバム 『facades & skeletons』、Ill Suono 名義で 〈disques corde〉 から作品をリリース。2006年からロサンジェルスに移住してから Low End Theory に通うようになり、2008年から来日させる。〈Dublab〉 所属の DJ としてもイベントに多数出演。〈disques corde〉 の A&R であり、〈onkyovizion〉 主催。
3月7日にリリースされる 『Low End Theory Japan Compilation 2012』 のコンパイルも担当している。

V.A. 『Low End Theory Japan Compilation 2012』
Release Date : 2012.03.07
Label : disques corde
Cat No : dccd-025
Price : Y1,980 (Tax Included)
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